ICC

書名仮想現実のメタフィジックス
著者マイケル・ハイム
訳者田畑暁生
出版社岩波書店
ISBN4-00-002817-0 C0036
解題ハイデガーの英語版翻訳者のひとりである著者は,ヴァーチャルリアリティがもたらす世界の複数性やサイバーパンクの小説を例に,メディアテクノロジーがもたらす人間存在の変容を語る.その語り口からは,折に触れて,ライプニッツのモナドロジーやハイデガー流の「実存」あるいはマオイズムといった東洋思想が登場する.また,本書には,本文を理解するための用語集が収録されている.
原書名THE METAPHISICS OF VIRTUAL REALITY
原著者Heim, Michael
原書出版社Oxford University Press
原書出版年1993
書名紙なし情報システム
著者F.W.ランカスター
訳者植村俊亮
出版社共立出版
出版年1984
ISBN4-320-02211-4
解題「紙はなくなるか?」というテーマは,コンピュータの進化ともに,日常的かつ社会的な文脈で登場してきた.インターネットなどの拡大に伴って「本」や「出版」など印刷媒体の存在が問い直されるなか,著者はいち早く(原著は1978年刊行)このテーマに取り組んでいる.本書は,コストを中心とした経営学的なアプローチが採用されているが,後半においては現在のインターネットとはいささか異なる未来展望が披露されていて,その差異を考えるだけでも興味深い.
書名記憶術
著者フランシス・イエイツ
訳者玉泉八州男(監訳)
出版社水声社
出版年1993
ISBN4-89176-252-7
解題本書でイエイツが着目するシモデニスからライプニッツに至るまでの記憶術に関する詳細な歴史は,延々と続aいてきた空間をめぐる認識方法であった.ロバート・フラッドを介してイギリスに渡った劇場モデルは,シェークスピアのグローブ座やライプニッツのモナドロジーへ大きな影響を与えたとも言われている.本書で紹介されている後期ルネサンスの汎知論的なヘルメス主義は,近代の空間認識の準備段階であったことをうかがい知ることができる.
書名近代日本の技術と技術政策
著者中岡哲郎+石井正+内田星美
出版社国際連合大学
出版年1986
書名グーテンベルグの銀河系
副書名活字人間の形成
著者マーシャル・マクルーハン
訳者森常治
出版社みすず書房
出版年1986
ISBN4-622-01896-9
解題アルファベットが編みだされ,世界はたった26種類の記号の組み合わせに還元されるようになった.そして,グ−テンベルクの印刷技術の発明がロゴス中心文化をもたらした.五感の不和を助長する印刷メディアという閉じたメッセ−ジは我々の知覚と思考の形式にどのような影響を与えたのか.われわれが直面している電子メディアをめぐる文化的状況の探究に備えるためには,活字文化について再考する必要がある.その再考にとって,モザイク的に構成された本書は重要な役割を果たしてくれる.
原書名THE GUTENBERG GALAXY
原著者McLuhan Marshall
原書出版社University of Tronto Press
原書出版年1962
書名グーテンベルクへの挽歌
副書名エレクトロニクス時代における読書の運命
著者スヴェン・バーカーツ
訳者船木裕
出版社青土社
出版年1995
ISBN4-7917-5429-8
解題500年近くに及ぶ「グーテンベルク革命」の影響力は,歴史的に言ってもきわめて大きい.アメリカにおける気鋭の文芸評論家である著者の関心は,コンピュータなどの電子メディアの進化のみならず,「印刷革命」によって確立してきた「著者」や「読者」あるいは「批評」といった文学的な主題へ注がれていく.単なるテクノロジー論にとどまらず,「書くこと」をめぐって変容しつつあるテーマを整理してくれる一冊である.
書名権力のペンタゴン
副書名機械の神話 第二部
著者ルイス・マンフォード
訳者生田勉・木原武一
出版社河出書房新社
出版年1973
ISBN4-309-24020-8
解題著者の最も包括的な思想を知ることのできる一冊.ここで著者が提出する「メガマシン」という概念は,人間をひとつの部品として位置づけ,その部品を組み立てて巨大な機械に作り上げることを文明と称してきたことを,終始一貫して批判している.そして,「メガマシン」は,20世紀に入りテクノロジーによってさらに武装化し,あらゆる権力を集約させている.その推移が,本書では批判的に描かれている.技術文明史の古典として読み続けられている一冊.
原書名THE PENTAGON OF POWER / The Mith of Machine Ⅱ
原著者Mumford, Lewis
原書出版社Harcourt Brace Javanovich, Inc.
原書出版年1970
書名公共性の構造転換(第二版)
副書名市民社会の一カテゴリーについての探究
著者ユルゲン・ハーバーマス
訳者細谷貞雄+山田正行
出版社未来社
出版年1994
ISBN4-624-01123-6 C0010
解題30年前に出版されて以来,「市民的公共性」というテーマを包括的に取り扱った本書は,「公共性」という近代社会を考えるとき,最も基本的な概念を考察する上で古典的な位置を与えられ,読まれ続けている.コミュニケーションの経験(たとえば,著者自身が言うところの「読書する公衆」といった分析上の枠組み)が重要な役割を果たしているが,電子メディアによるコミュニケーションの経験が変容し,公共性が再政治化されているとすれば,本書の内容を詳細に吟味する必要性と重要性はきわめて大きいと言える.
書名公共性の喪失
著者リチャード・セネット
訳者北山克彦+高階悟
出版社晶文社
出版年1991
ISBN4-7949-6061-1 C0036
解題本書においては,公的なもの全般が衰退し私的なものが肥大している状況が批判的に描かれいている.近代市民社会を支えた市民階級が,共同体における刹那的な安定を求めるあまり,自らの階級的な利害をめぐって闘争したり自らを公に表現しなくなってしまった.その理由をめぐって,本書では,市民社会の成立にまでさかのぼって解説されている.また,その検証は,政治や経済といった社会的な側面のみならず,芸術文化の領域にまで及んでおりその範囲は幅広い.
書名「声」の資本主義
副書名電話・ラジオ・蓄音機の社会史
著者吉見俊哉
出版社講談社(講談社選書メチエ48)
出版年1995
ISBN4-06-258048-9
解題「声」を手がかりとして,情報メディアの受容とそこから派生した消費社会の動きを解明する大衆文化論.「声」がブルジョワジ−の記号として機能し始めた19世紀を主なフィ−ルドとして,電話やラジオあるいは蓄音機といったメディアテクノロジ−がその社会的な背景として介入することによって,それまでになかったネットワ−クが誕生した.その誕生をいくつかのエピソ−ドを交えながら概説するとともに,テクノロジ−が果たした役割が論じられる.
書名声の文化と文字の文化
著者W-J・オング
訳者桜井・林・糟谷
出版社藤原書店
出版年1991
ISBN4-938661-36-5
解題書くということをあまりに当然のこととしている我々にとって,「書く」ということをまったく知らない文化について考えをめぐらせるのは難しい.「書く」という技術を身につけたとき,一体どのような差異が生じたのか.印刷技術のエレクトロニクス処理の発達にともなうテクストの変容.「書く」というメディアテクノロジ−の変化は少なからず我々を取り巻く環境の諸構造に影響をあたえている.声の文化と文字の文化間に介在する人間の心性の変化とは何かという問題についても語られる.
原書名ORALITY AND LITERACY
原著者Ong, Waler J.
原書出版社Methuen & Co. Ltd.
原書出版年1982
書名心の社会
著者マーヴィン・ミンスキー
訳者安西祐一郎
出版社産業図書
出版年1990
ISBN4-7828-0054-1 C0010
解題「フレ−ム理論」を提唱し認知科学や人工知能の分野を指導的な役割を果してきた著者は,エ−ジェントという心の基本単位を設定し,対象を認知する上で,その相互作用の連鎖が重要であると主張している.暗黙知としてのフレ−ムという概念をさらに精密にした「エ−ジェント」に基づく「心の機能説」は,コンピュ−タサイエンスの各分野を始めとして,心理学や哲学などにも決定的な影響を与え続けている.
原書名THE SOCIETY OF MIND
原著者Minsky, Marvin
原書出版社Simon & Schuster
原書出版年1985
書名孤独の克服
副書名グラハム・ベルの生涯
著者ロバート・ブルース
訳者唐津一(監訳)
出版社NTT出版
出版年1990
解題電話の発明者であるグラハム・ベルの伝記.聾唖者教育に従事していた父ウィリアムが考案した聾唖者のための言語を改良し,電話のメッセージ交換の体系に利用し音声によるコミュニケーションを実現したベル.本書では,その電話の登場を詳細に知ることができるだけでなく,近代メディアの創造に大きく貢献したベル父子がめざしたコミュニケーションの理想像を実感することもできる.
原書名BELL
原著者Bruce, Robert V.
原書出版年1990
書名コミュニケーション
副書名精神医学の社会的マトリックス
著者G.ベイトソン+J.ロイシュ
訳者佐藤悦子+ロバート・ボスバーグ
出版社思索社
出版年1989
ISBN4-7835-1148-9
解題コミュニケ−ションという用語の意味は,多様である.言うまでもなく,「通信」ということのみならず,人間関係の対人状況に用いられる場合も少なくない.本書は,アメリカ社会を社会的なマトリックスとして,精神医学者ルイシュと人類学者ベイトソンが,対人関係における相互作用を分析したものである.1950年前後にサイバネティクスの知見を得たベイトソンが,未開社会から精神分析へと,人間の集団への関心を向けていったことも,本書では窺い知ることができる.
書名コミュニケーション
副書名ヘルメス Ⅰ
著者ミッシェル・セール
訳者豊田彰+青木研二
出版社法政大学出版局
出版年1985
ISBN4-1310-11174-7710
解題著者は1970年代にライプニッツ研究をおこなったが,その研究成果を集成したのが本書である.数学とその歴史に通じた著者は,現代数学から抽出した構造概念に基づく構造的な方法を提唱し,コミュニケーションという概念の誕生とそのプロセスが精密に解き明かされている.第二部のタイトルにもなっている「旅,翻訳,交換」は,セールのコミュニケーションにとって重要な概念となっている.
書名コミュニケーションの科学
副書名マルチメディア社会の基礎理論
著者E.M.ロジャース
訳者安田寿明
出版社共立出版
出版年1992
ISBN4-320-02590-3
解題「コミュニケ−ション技術と社会」という大学院の講座で教科書として採用されているだけあって,その内容は,放送や広告から近年のコンピュ−タネットワ−クに至るまで,さまざまな事例に基づいて,コミュニケ−ション技術の影響力が丹念に述べられている.基礎的なデ−タ収集と綿密な文献調査(ほぼアメリカ合衆国国内に限定されてはいるが)に基づいているため,本書はコミュニケ−ション論に関する資料集としても機能している.
書名コンピュータ社会と漢字
副書名言語学者が見た第五世代コンピュータ
著者マーシャル・アンガー
訳者奥村睦世
出版社サイマル出版会
出版年1992
ISBN4-377-10002-5
解題「強いAI」,「機械の知性」にたいし楽観的であった日本の「第5世代プロジェクト」.しかしこの見解は見直されるべきであると作者マ−シャル・アンガ−はいう.テクノロジ−の発展に伴う技術革新の影響による日本語表記改革の必要性,コンピュ−タのパフォ−マンスを低下させる「漢字」と人工知能,第五世代コンピュ−タ・プロジェクトの停滞との関連性をアメリカの言語学者が鋭く解き明かしている.
書名コンピュータの神話学
著者セオドア・ローザック
訳者成定薫+荒井克弘
出版社朝日新聞社
出版年1989
ISBN4-02-255963-2
解題アメリカ60年代の対抗文化(カウンタ−カルチャ−)を世界に紹介した歴史家ロ−ザックがコンピュ−タ文化の浸透によって変容しつつあるさまざまな社会的状況を分析している.本書で詳しく紹介されているカウンタ−カルチャ−の精神的所産であったコンピュ−タとその文化も,今や国家権力に回収されてしまったかに見える.本書の原著は1986年であるが,いち早く現在の状況を予見し「情報信仰」がはらむディレンマを指摘した好著である.