ICC

著者スヴェン・バーカーツ
訳者船木裕
書名グーテンベルクへの挽歌
副書名エレクトロニクス時代における読書の運命
出版社青土社
出版年1995
ISBN4-7917-5429-8
解題500年近くに及ぶ「グーテンベルク革命」の影響力は,歴史的に言ってもきわめて大きい.アメリカにおける気鋭の文芸評論家である著者の関心は,コンピュータなどの電子メディアの進化のみならず,「印刷革命」によって確立してきた「著者」や「読者」あるいは「批評」といった文学的な主題へ注がれていく.単なるテクノロジー論にとどまらず,「書くこと」をめぐって変容しつつあるテーマを整理してくれる一冊である.
著者O.B.ハーディンソンJr.
訳者下野隆生・水野精子
書名天窓を抜けて消えてゆく
副書名20世紀の文化とテクノロジー
出版社白揚社
出版年1993
ISBN4-8269-0055-4
解題自然,歴史,言語,芸術は一つの繋がれた「エンジン」である.これら現代文化の諸要素の基本原理がテクノロジ−の進歩により揺るぎはじめ,従来使われてきた「人間性」という言葉の意味と異なる解釈がコンピュ−タの出現により必要になってきた.博学な著者による幅広い事例をもとに,「消失」というメタファ−を手掛かりとして現代文化について考察するともに,「消失」後の世界にたいする予感が提示されている小説のように読みやすい一冊.
原著者 O.B.HARDISON, Jr.
原書名DISAPPEARING THROUGH THE SKYLIGHT
原書出版社Viking Penguin
原書出版年1989
著者ユルゲン・ハーバーマス
訳者細谷貞雄+山田正行
書名公共性の構造転換(第二版)
副書名市民社会の一カテゴリーについての探究
出版社未来社
出版年1994
ISBN4-624-01123-6 C0010
解題30年前に出版されて以来,「市民的公共性」というテーマを包括的に取り扱った本書は,「公共性」という近代社会を考えるとき,最も基本的な概念を考察する上で古典的な位置を与えられ,読まれ続けている.コミュニケーションの経験(たとえば,著者自身が言うところの「読書する公衆」といった分析上の枠組み)が重要な役割を果たしているが,電子メディアによるコミュニケーションの経験が変容し,公共性が再政治化されているとすれば,本書の内容を詳細に吟味する必要性と重要性はきわめて大きいと言える.
著者マイケル・ハイム
訳者田畑暁生
書名仮想現実のメタフィジックス
出版社岩波書店
ISBN4-00-002817-0 C0036
解題ハイデガーの英語版翻訳者のひとりである著者は,ヴァーチャルリアリティがもたらす世界の複数性やサイバーパンクの小説を例に,メディアテクノロジーがもたらす人間存在の変容を語る.その語り口からは,折に触れて,ライプニッツのモナドロジーやハイデガー流の「実存」あるいはマオイズムといった東洋思想が登場する.また,本書には,本文を理解するための用語集が収録されている.
原著者Heim, Michael
原書名THE METAPHISICS OF VIRTUAL REALITY
原書出版社Oxford University Press
原書出版年1993
著者シーモア・パパート
訳者奥村貴世子
書名マインドストーム(新装版)
副書名子供,コンピューター,そして強力なメディア
出版社未来社
出版年1995
ISBN4-624-40043-7
著者平井正
書名20世紀の権力とメディア
出版社雄山閣
出版年1995
解題20世紀は初めてファシズムを経験し,そのファシズムが進行する上で,メディアが重要な役割を果たした.人間の集団化にメディアが関与することを如実に教えたのは,ナチス・ドイツである.本書では,ファシズムを代表するナチス・ドイツにおけるメディア,とりわけ映画が果たした役割を詳細に分析し,大衆が暴力的な群衆として組織化され,ドイツ人としての一元的な国家意識が形成され統制されていくプロセスが詳細に分析されている.
著者ダニエル・ブーアスティン
訳者星野郁美+後藤和彦
書名幻影の時代
副書名マスコミが製造する真実
出版社東京創元社
出版年1964
解題1962年に原著が刊行された本書のテーマは,メディアがもたらす「疑似イヴェント」である.1960年代は,言うまでもなくテレビの普及が急速に拡大し,その影響力が重要なテーマとなっていた時代であった.現在の「仮想現実」に通じる「疑似イヴェント」は,現在のメディア環境を考える上での草分け的な概念であると同時に,われわれが無頓着に用いている「イメージ」という言葉を今一度再考する上での手がかりを与えてくれるはずである.
原著者Boorstin, Daniel J.
原書名THE IMAGE
原書出版年1962
著者藤幡正樹
書名巻き戻された未来
出版社ジャストシステム
出版年1995
ISBN4-88309-098-1
解題電子メディアはロゴス中心主義の「閉じた文化」から本当に我々を解放してくれるのだろうか.文化の規範化に抗するコンピュ−タ・ネットワ−クがもたらす「自由」の楽しさについて,「脱着するリアリティ−」や「生け捕られた速度」といった著者自身がおこなったプロジェクトや電子文化の周辺を通じて感じさせてくれる.モザイク状に散りばめられた仮説が未来のメディアを鷲掴みにする.
著者ロバート・ブルース
訳者唐津一(監訳)
書名孤独の克服
副書名グラハム・ベルの生涯
出版社NTT出版
出版年1990
解題電話の発明者であるグラハム・ベルの伝記.聾唖者教育に従事していた父ウィリアムが考案した聾唖者のための言語を改良し,電話のメッセージ交換の体系に利用し音声によるコミュニケーションを実現したベル.本書では,その電話の登場を詳細に知ることができるだけでなく,近代メディアの創造に大きく貢献したベル父子がめざしたコミュニケーションの理想像を実感することもできる.
原著者Bruce, Robert V.
原書名BELL
原書出版年1990
著者古瀬幸広・廣瀬克哉
書名インターネットが変える世界
出版社岩波書店(岩波新書)
出版年1996
ISBN4-00-430432-6
解題世界中にユ−ザ−を飛躍的に拡大しつつあるインタ−ネットがもたらす影響については,さまざまな意見が出されている.本書は,ハッカ−たちを,システム破壊者集団として位置づけるのではなく,イワン・イリイチの思想を理想とし「つなぐこと」に執心した理想主義者としてとらえることからスタ−トしている.ハッカ−たちの活動を通じて,現在拡大しつつあるインタ−ネットの社会的な諸問題が,コンパクトにまとめられている.
著者アルベール・ブレッサン(編)
訳者会津泉
書名ネットワールド
出版社東洋経済新報社
出版年1994
解題外交官出身の著者による「メタ・ネットワーク論」.著者の「メタ・ネットワーク論」は,あくまで「関係」のマネジメントという視点で展開されている.コンピュータネットワークなど共有される情報も,「関係」の中で共有されるものである.本書では,「相互認証」をキーワードに主体の多様性を重視しながら,ネットワークが構成されていく必要性が強調されている.資本主義経済がもたらすネットワークの構成力を知る上で,大きな手かがりを与えてくれる.
著者G.ベイトソン+J.ロイシュ
訳者佐藤悦子+ロバート・ボスバーグ
書名コミュニケーション
副書名精神医学の社会的マトリックス
出版社思索社
出版年1989
ISBN4-7835-1148-9
解題コミュニケ−ションという用語の意味は,多様である.言うまでもなく,「通信」ということのみならず,人間関係の対人状況に用いられる場合も少なくない.本書は,アメリカ社会を社会的なマトリックスとして,精神医学者ルイシュと人類学者ベイトソンが,対人関係における相互作用を分析したものである.1950年前後にサイバネティクスの知見を得たベイトソンが,未開社会から精神分析へと,人間の集団への関心を向けていったことも,本書では窺い知ることができる.
著者マイケル・ベネディクト
訳者NTTヒューマン・インタフェース研究所+鈴木圭介+山田和子
書名サイバースペース
出版社NTT出版
出版年1994
ISBN4-87188-265-9 C0010
解題デジタル技術の進歩による電子ネットワ−クの発達.たとえば,デスクトップでのヴィデオ会議,VR(ヴァーチャルリアリティ)あるいはヴィデオゲ−ムなど.これらはサイバ−スペ−スではなくプレステ−ジの段階であるという.ではサイバ−スペ−スとはいったい何を指すのか.SF(サイエンスフィクション),哲学,人類学など多岐にわたる15人の視点から明らかにされる現実世界と仮想世界の関連性とその全貌を集成した論文集.
原著者Benedikt, Michael
原書名CYBERSPACE / First Step
原書出版社MIT Press
原書出版年1991
著者ライナルド・ペルジーニ
訳者伊藤博明・伊藤和行
書名哲学的建築
副書名理想都市と記憶劇場
出版社ありな書房
出版年1996
ISBN4-7566-9642-2
解題コンピュ−タの専門用語でも登場するように,建築(ア−キテクチャ)は芸術や文化のさまざまな局面で決定的なメタファとして登場してきた.本書のタイトルになっている「哲学的建築」には,神殿や劇場あるいは都市といった空間をめぐるイデアが凝縮されている.本書は,ルネサンスからバロック期を経て近代,そして現在のサイバ−スペ−スに至る空間認識の源流を探る上で,格好のガイドブックとして機能するであろう.
著者ヴァルター・ベンヤミン
訳者佐々木基一(編集解説)
書名複製技術時代の芸術
副書名ヴァルター・ベンヤミン著作集2
出版社晶文社
出版年1970
ISBN4-7949-1062-2
解題複製技術の芸術文化との関連を論じた先駆的かつ独創的な古典.複製を実現するテクノロジ−は,芸術に政治性を与え,大衆の参加を大きく促した.マルクス主義者である著者は,複製物(芸術のみならず文化領域全般)において,私有の観念が排除されることを歓迎するとともに,テクノロジ−が果たす役割を入念に検証する.最終的には,時代を変容させる推進力を欠いたあらゆる歴史主義的な芸術や文化が痛烈な批判の対象となっている.
著者J.ボードリアール
訳者竹原あき子
書名シミュラークルとシミュレーション
出版社法政大学出版局
出版年1984
解題1976年から1979年にかけての論文と講演を集成したもの.シミュラークルとシミュレーションという概念を軸として,歴史的な事件からサブカルチャーやテクノロジーの断面に至るまで幅広い分野を対象として,逸脱した狂気やマージナルなものが,シミュレーションの時代には突如として反転する可能性があることが指摘されている.「シミュレーション」や「ハイパーリアル」といった本書で用いられている用語が流行語になるほど,80年代には幅広い読者を得た一冊でもある.
著者J.ボードリアール
訳者塚原史
書名透きとおった悪
出版社紀伊國屋書店
出版年1991
解題さまざまな領域のものが相互浸透し,政治,経済,美術,性は普遍化される.否定性を除去し肯定性だけを受容するようなシステムが生まれた.そしてそのまわりからウイルス的に侵入してくる「悪の透明性」.エイズ,コンピュ−タ・ウイルス,臓器移植,人種差別,人工知能など今日的な文化状況を対象に,知的なスリルに満ちた一冊.
著者マーク・ポスター
訳者室井尚・吉岡洋
書名情報様式論
副書名ポスト構造主義の社会理論
出版社岩波書店
出版年1991
ISBN4-00-002686-0
解題急速なテクノロジ−の発達における電子メディアの出現.記号・言語の問題に関心をむけ,今まで難解とされてきたポスト構造主義と電子メディアを関連づけることにより,その「開放的」な解釈を試みる.作者の柔軟な姿勢から窺えるように,異なるコンテクストから成り立つポスト構造主義と批判理論をメディア環境を触媒として結びつける試みを見事に果たしている.「情報というモ−ド」というパ−スペクティブから世界をみつめる.
原著者Poster, Mark
原書名THE MODE OF INFORMATION
原書出版社Polity Press
原書出版年1990
著者ジェイ・デイヴィット・ボルター
訳者土屋俊・山口人生
書名チューリング・マン
出版社みすず書房
出版年1995
ISBN4-622-03954-0
解題人間の心とは単なる情報処理装置なのであろうか.コンピュ−タというメタファを得ることによりこのような疑問が浮かびあがった.コンピュ−タとその周辺にたいする特性を正確に説明しながら,チュ−リング型人間とデカルト型,プラトン型人間の違いを述べ,哲学と科学をもとに新たなる視点を開く.技術革新とコンピュ−タを触媒に科学,哲学,歴史,芸術などをむすびつけ,来たるべき未来の人間像を描く.
原著者Bolter, J.David
原書名TURING MAN
原書出版社The University of North Carolina Press
原書出版年1984
著者ジェイ・デイヴィット・ボルター
訳者黒崎・下野・伊古田
書名ライティングスペース
副書名電子テキスト時代のエクリチュール
出版社産業図書
出版年1995
ISBN4-7828-0087-8 C0010
解題「書く」という行為は,抽象的な思考というものを視覚空間に創造するテクノロジ−であり,ライティングスペ−スの変貌(パピルス・ロ−ル,写本,印刷書籍,コンピュ−タディスプレイ)はわれわれ書き手の思考形成に影響を少なからず与えてきた.コンピュ−タが提供してくれる新たなライティングスペ−スはわれわれにどのようなエクリチュ−ルと知のア−キテクチャを与えてくれるのだろうか.「チュ−リングマン」のデイヴィッド・ボルターが「書く」という行為を精密に問い直す.
原著者Bolter, J.David
原書名Wring Space
原書出版社Lawrence Erbaum Associates
原書出版年1991