ICC

オープン・スペース 2012

《切り立った映画》2011年
《フリップ・ドット・ミラー(スモール・ヴァージョン)》2011年
《オクテット・プロジェクター》2008年
ジュリアン・メール

上:《切り立った映画》2011年|撮影:木奥恵三
中:《フリップ・ドット・ミラー》2011年|撮影:木奥恵三
下:《オクテット・プロジェクター》2008年

《切り立った映画》と《フリップ・ドット・ミラー(スモール・ヴァージョン)》の2作品は,スライド・プロジェクターとコンピュータで制御されたオリジナルの装置を用いた映像インスタレーションです.スライド・プロジェクターから投影される映像は,オリジナルの装置に取り付けられたミラー部分へ向けられており,反射した映像がスクリーンに映しだされています.このミラーの形状とパーツの数,そしてその動きが,映像に独特の効果を与えているのが見てとれます.彼の作品は,映像の物質性と,映像を映し出す装置が持つ物質性,その両方を露わにしているといえるでしょう.

一方,《オクテット・プロジェクター》は,たくさんの小さな自作の液晶プロジェクターで構成された作品で,《ローレゾリューション・シネマ(低解像度の映画)》のシリーズにあたる作品です.オクテット(Octet)とは,音楽の分野では八重奏を意味しますが,情報通信やコンピュータの分野では8ビット(bit)を指す用語です.低い解像度や少ないデータ容量から作りだされる映像に,意外にも深い奥行きや広がりが感じられるのは,写真家がネガに細心の注意を払うように,作家は自作プロジェクターの液晶に細心の注意を払っているからです.

メカニカルな映像装置を分解し,それを新たに組み直していくジュリアン・メールの活動は,メディア考古学の研究と芸術的実践との混成物であり,それはまさに「メディアの再発明」であるといえるでしょう.

ジュリアン・メール プロフィール

1969年フランス・メス生まれ,ベルリン在住.1990年代半ば頃からインスタレーションやパフォーマンス,メディア・アートの交差する領域で活動し,ライヴで上演可能な作品を制作してきた.映像メディアのテクノロジーを再発明するという独特のスタイルから,インスタレーション作品,パフォーマンスともに国際的に広く紹介されている.2012年4月からオランダのV2_とベルギーのTransmediaによる共同アーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加し,ブリュッセルにて滞在制作を行なった.

ポッドキャスト「チャンネルICC」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.|→ 詳細|

パフォーマンス&アーティスト・トーク ジュリアン・メール
日時:2012年5月26日(土),27日(日)[終了しました.]
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