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デジタル・フロンティア
多文化主義のなかの日本

Digital Frontier: Japan and Multiculturalism

月尾嘉男×柏倉康夫×武邑光裕×キム・H・ヴェルトマン×
デイヴィッド・L・グリーン×ルイーズ・スミス



インターネットは米国の戦略?

武邑光裕──2005年には全世界で約10億人の人間がインターネットでつながるという予測があります.こうしたグローバル社会のなかで,情報スーパーハイウェイから多くの文化的利益を得ようとする考え方と,地域の文化,自国の文化というものの様式や慣習をいかに守るかという,二つの力の均衡のなかでわたしたちはこれから次世紀を迎えるのではないかと思います.

デイヴィッド・L・グリーン――インターネットは,Eメールとニュース・グループによるコミュニケーション・メディアから離陸し,ウェブによる真の情報拡散システムへと移り,現在は,情報とコミュニケーション・ネットワークのさらなる豊かな結びつきへと移行しつつあります.しかしウェブにおいても,残念ながら現時点ではほとんどは一方通行です.「ここに行け」とか「これを見ろ」とかいうパンフレットのようなものです.最近アメリカ合衆国で発表されたレポートは,ウェブで活動している人たちの孤立状態について報告していて,これによるとそうした人々はコンピュータにしがみつき,一方通行の情報を拾い集めているということでした.わたしは,このような一方通行を解消してくれるものとして,任天堂のようなゲームのテクノロジーに期待しています.既にインターネット上では,世界中のプレイヤーとテニス・ゲームができます.

月尾嘉男――日本のインターネットの利用者は2000万人に達しました.普及率が15パーセントを超えると爆発的に普及するというメディアの経験則からすると,もはやインターネットは日本社会の新しい通信基盤になったと言えます.しかし,各種の予測ではインターネットの日米格差は今後もさらに拡大していくとみられています.95−98年に米国のコンピュータや情報通信などのIT分野は7倍成長しましたが,日本ではほとんど成長していませんし,日本の主要なIT企業はマイナス成長になっています.  「モノ」をつくる時代は,追いかけて真似していればよかったのですが,「情報」の時代には二番手には何の価値もないのです.“Winner takes all”と言われるように,一番手がいいところをすべてとってしまうのです.例えば,インターネット上で洋書販売を手掛けるサイトは数多いのですが,「ワンクリック・ショッピング」サーヴィスは既に一番手がビジネス・モデル特許を取得しており,二番手以降はそれが使えないのです.


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