「情報」を柱にした大学改革

国際情報通信研究科設置の目的

歌田――大学院国際情報通信研究科では,先の三つの研究分野に相当して三つのコースをつくられるということですが,情報通信システムコースは技術的な研究,マルチメディアサイエンスコースはコンテンツ制作,社会環境コースは制度的なものの研究というふうに考えてよろしいでしょうか.

奥島――そうですね.大体そういうことで結構じゃないかと思いますが,三つめの社会環境コースは.制度的な問題だけじゃなくて,情報経済の問題や情報文化論まで非常に幅広い分野を考えております.

歌田――マルチメディアサイエンスコースというのは,アートの要素が強いわけですが,美術作品を実際につくっていくというのは早稲田大学では,これまでにない分野ですね.

奥島――そうです.そこが早稲田の非常に面白いところで,芸術学部をもってないんですけれども,芸術家を多数輩出しておりますし,とりわけ,映像関係の人を輩出している.21世紀はやはり「映像の時代」だと考えておりますので,先輩たちの活躍もありますから,こうした学科で映像関係を思いきり展開していきたい.単に研究だけではなく,エンターテインメントの分野にも応用できるようにしたいと考えております.

 早稲田大学には専門学校(早稲田大学専門学校)がありますが,学生はほとんど大学卒業生か,在学生,あるいは大学院生で,非常にレヴェルが高いんですよ.ここに来年空間映像コースを新たに出発させ,しだいに拡大していって,舞台芸術などにまで広げていくことを考えています.研究をするだけではなくて,芸術活動,演劇活動,そういうものにまで進出することを考えたいと思っています.

歌田――こうしたコースの目的は,研究にあるのでしょうか,それとも専門家の養成にあるのでしょ うか.

奥島――はっきり言いまして,両方です(笑).
 先ほども申し上げましたように,私たちは,情報の面において早稲田がプライオリティをとりたいと戦略的な位置づけを考えています.これまで,そうした点について戦略的な観点をもっていなかったため他大学に遅れをとったと反省していまして,この面で学問的なバックグラウンドをつくるつもりです.

 同時に,この国際情報通信研究科は,主としてアジア太平洋を対象にして,この地域における大学生,それから各国の公務員,各国の企業の中堅技術者,そういう人たちを多く迎え入れたい.アジア太平洋研究科の場合もそうですけれども,学生の半数は外国人にしたいと考えています.

歌田――単純な試験をするわけではないんですね.

奥島――そうです.アメリカの大学と同じアドミッションズ・オフィス方式で,例えば日本の企業がアメリカの大学院に人を送るときもある程度の枠が考えられているわけですが,私たちも企業派遣を十分考慮する.それから国別も考慮したい.さらにいろいろな要素が混ざっているほうがいいと思っていますから,年齢も考慮したい.論文試験とインタヴューを組み合わせて,多様な学生を採りたいと思っています.

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