モザイクから遠く離れて

fun to communicate

 ペットがメールを運ぶ「PostPet」[図7]のブレイク,「ICQ」[★13]や「AIM(AOL Instant Messenger)」[★14]などの簡易メッセージング・ツールの流行,携帯電話・PHSを使ったメール・サーヴィスの普及――これらの現象は,従来の通信メディアとは違った,“fun to communicate”そのものを増幅させるメディアとして確固たるポジションを築きつつあることを意味している.

 従来の電話が「おしゃべり」という「不要不急のコミュニケーション」を増幅させたのに対して,これらネット上のソフトウェア/サーヴィス群は,より端的な「コネクティヴィティの楽しみ」の部分に強くフォーカスしている.友人・知人がオンラインにいるかどうかを確認でき,チャットやごく短いメッセージの交換ができるAIMは,1700万人のAOLユーザーのあいだではじつに1日あたりおよそ8億通ものメッセージが行き交い,メールのトラフィックを軽く凌いでいる.

 今後,この種のコミュニケーション・ウェアは,まず一つの流れとしては,ユーザー側のコンピューティング・パワーの増大にともなって3Dインターフェイスへと発展し,ネットワークドVRによる共有空間でのコミュニケーションに進化していくのではないか.今後,ごく一般的なパーソナル・ユーザーにも,ソニーが今年中にも発売する「プレイステーション2」(PS2)のようなモンスター級のコンピューティング・パワーを秘めた低価格のデヴァイスが行き渡り,それらが広帯域・常時接続のアクセス・ラインにつながることを想像すると,ハイレゾ・3D系のコンテンツが急速に台頭していくことは必然的な流れに見える.そして,言うまでもないことだが,この種のコミュニケーション型エンターテインメントの最たるものがネットワーク・ゲームであり,PS2のような次世代デヴァイスと高速回線がそのポテンシャルを最も活かす分野になることはまちがいないだろう.

 一方,携帯電話やPHSによるメール・サーヴィスは引き続き無線系のトラフィックの中に大きな比重を占めることになるだろう.またこの分野では,iモード(NTTドコモ)[★15]やcdmaOneグループのWAP(Wireless Application Protocol)[★16]などモバイル系コンテンツの拡充,あるいはGPS(Global Positioning System)など位置情報サーヴィスとの連動(例えばセイコーエプソンが商品化したGPS付きPDA「Locatio」[★17]はその典型)といった新サーヴィスが相次いでいるが,これらは実空間でのユーザーの経験を情報的に拡張する「オーギュメンテッド・リアリティ」のヴェクトルを描いているのは確実で,これからモバイル系のデヴァイスがウェアラブルなインターフェイスを備えるにともなって,その真価が問われることになるだろう.

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