Feature:Dance Frontiers

Philippe D

ダンス・フロンティア――身体のテクノロジー
Dance Frontiers --Technologies of the Body

フィリップ・ドゥクフレ
インタヴュアー=桜井圭介
Philippe Decoufle
Interviewer: SAKURAI Keisuke

SHAZAM !

この舞台には三つの要素があります.第一に純粋な「ダンス」.第二にヴィデオやハーフミラーによる「映像」,そして「音楽」.僕はとにかく「動くもの」に興味があるのです.人間の身体だけじゃなくて「モノ」も「映像」も動かしたいわけです.「振付」とは空間と時間のなかでの動きを記述すること,「ダンス」とは動きそのもののことだとすれば,今回のような仕事(映像の使用)も,自分としては「映像に対するコレオグラフィ」であると考えています.

僕が情熱をもっているものは二つあって,それはスペクタクルと映画です.
《SHAZAM!》ではその両方を混ぜてしまおうという意図がありました[★1].これは新しいかたちの「ファンタスマゴリア」[マジックランタン.19世紀に流行した光学的トリックによる見世物]です.今日われわれが生きている世界に,映像と現実がごちゃ混ぜになったさまざまな表現のかたちがある.現実においても,自分の見ているものは本 物なのか,この世界は本物なのか判らなくなることのほうが多いのではないでしょうか.もしかしたら現実のほうが僕のスペクタクルよりもスゴイことになっているのかもしれない.

しかし,いろいろなテクニック,いろいろなメディアを混ぜるということは,いまやあらゆるアートで普通に行なわれていることであって,その意味では僕のやっていることもそんなに珍しくはないし,逆にダンスのほうが遅れているということなのかもしれません.

MIXING

いろんなものを混ぜ合わせたいのです.15歳でサーカス学校に入り,その後マルソーのマイム学校にも行ったし,バレエも,ジャズ・ダンスやモダン・ダンスも習った.でも僕は何かのジャンルを究めたというわけでありません.何のスペシャリストでもない.僕は自分の職業を「ミキサー」だと思っています.

初期の作品には「ロック」というコンセプトがあって,繰り返し(リフ)の構造を用い「短いもの」にすることによって,ロック・ミュージックのようなエネルギーを伝えようとするものでした.次の段階で考えたのは,夢に近い幻想的な世界をつくりたいということです.理解させるというより観客のイマジネーションを刺激する,彼らが自分で夢を見るための刺激になるようなものをつくろうとしたわけです.そして,いまやろうとしているのは最先端のメディアをいかに自分の作品のなかに組み込んでいくかということです.映像と人間の身体の動きに関して言えば,まだまだ発展させるべきものはたくさんある.
例えば,「ホログラムを舞台で使いたい!」と思うわけです.僕はそうしたリサーチをやるための小さなラボをもっているのですが,まだ手作りの日曜大工的な段階にとどまっていると言わざるをえない.大企業が支援してくれるとか,研究者で興味をもってくれる人が協力してくれるといいんですが.

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