ロボットの生態系

★1
ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー.音声翻訳システムの開発,超並列人工知能の提唱を経て,分子生物学・計算生物学と「ロボカップ」の研究を通じて,新たな知的システムの構築を目指している.

★2
電総研知能システム部勤務.ヒューマノイド,インタラクションなど知覚と行動の相互作用による知能の研究に従事.

★3
コンピュータのなかで操作される記号.

★4
実際のロボットの手や脚,頭などの物理的な身体.

★5
複数のエージェント(ロボットも含む)が,協調したり,競争する行動を学習したり,獲得する研究分野.

★6
コンピュータ・チェスに代表されるように,多くの研究者が共通の問題にアプローチすることで,その分野の発達・展開を促すために設定される共通のテーマ.特に,優劣を判定するために対戦型の競技が選ばれることが多い.

★7
直訳すると「ひな型照合」.中身を吟味せず,表層的に照合可能かどうか調べること.

★8
知識表現(データとそれを実行する手続きの統合的表現)が実用化システムに応用されることによって起きた問題.状態とその変化を知識表現の基礎として用いるときには,ある時点で変化する状態だけではなく,変化しない状態のすべてを記述しなければ,次の状態が確定しないこと.

★9
刺激=反応(stimulus-response)図式.ある感覚入力が得られたときにどのような行動をとるかは,その入力状況だけに依存し,それ以前に得られた入力やエージェントの内部状態には依存しないという考え方.ここでは,感覚入力をより一般的に状態や状況ととることにより,ロボットの内部状態やある程度の時間的な推移をも含めた意味で,ある状況に対する行動決定が,学習を通じて行なわれていることをさす.このことは逆に,状況そのものもロボット自身が規定していくことが重要な点であることを意味する.

★10
いくつかの解釈があるが,ここでは上下双方向の相互規定関係を意味する.下位レヴェルの要素の個別的局所的運動が合成され,下の階層ではみられなかった上位の大域的秩序が形成されるボトムアップの過程と,上位の大域的秩序が再び下位の個別運動の発現の動機や境界条件となるトップダウンの過程の両方の動態が創発である.例えば生命システムでは,細胞(下位要素)が集まって器官や個体(上位大域的秩序)が形成される(ボトムアップ)が,個体の振る舞いや器官の状態は細胞の活性にも影響する(トップダウン).同じような関係は,さまざまな階層システムで普遍的に見られる.

★11
SF作家アイザック・アシモフが提唱した「ロボット工学の三原則」.

第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない.また,その危険を看過することによって,人間に危害を及ぼしてはならない.
第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない.ただし,あたえられた命令が,第一条に反する場合は,この限りでない.
第三条
ロボットは,前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり,自己をまもらなければならない.
ロボット工学ハンドブック,第56版,西暦2058年
(『われはロボット』小尾芙佐訳,ハヤカワ文庫SFから)

★12
1930−75.分子生物学者.元名古屋大学教授.不連続複製を発見してDNA複製機構の解明に大きく貢献した.原爆被爆の後遺症のため,早世.

★13
Reinforcement Learning. 外部環境から報酬や懲罰など行動の良否の評価を与え,それを繰り返すことで,エージェント(ロボット)自身が評価の良いものへと改善し最適な行動を自律的に獲得していくことを目指す手法.

★14
10参照.

★15
コンピュータ言語で書かれたプログラムを,そのまま染色体(遺伝子型)とみなして,それに遺伝子的アルゴリズム(遺伝子型中に生存に有利な構造を自然選択によって順次獲得し,それらの有利な部分を逐次結合することで,より環境とその変化に適応する個体へと発展する進化の過程をシミュレートする方法)を適用し,性能評価によって淘汰をかけるという枠組みで問題を解く試み.

★16
複数の進化の過程が,相互に影響を与えながら進化していくこと.生物進化の場合は複数の種が相互作用しながら進化することをさすが,ここではサッカーのプレーヤーとコーチが互いに影響しあいながら学習していくことを意味している.

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