ICC Report

Japan-Germany

日独メディア・アート・シンポジウム

1998年9月12日
ギャラリーD



東京ドイツ文化センターとの共催による日独メディア・アート・シンポジウムを「メディア・アートの未来形――理論と展望」と題して,ドイツおよび日本のメディア・アートの分野で著名な3人の専門家を招聘し,去る9月12日(土)ギャラリーDにおいて開催した.ドイツからはフリードリッヒ・キットラー(ベルリン・フンボルト大学教授),ボーリス・グロイス(カールスルーエ造形大学教授)が参加,日本からは森岡祥倫(東京工芸大学助教授)の参加を得て,各々がレクチャーを行なった後に,3人によるシンポジウムが行なわれた.

「コンピュータ・グラフィック 技術的な枠を超えた概論」と題して行なわれたキットラーの講演では,コンピュータ・グラフィック画像における初源的問題から視覚や自然認識など原理的,哲学的言及が行なわれたほか,グロイスの「美術館的なコンテクストにおけるメディア・アートのプレゼンテーションの問題」ではメディア・アートの出現によって変容するミュージアムの在り方について,また森岡からは「日本のメディア・アート教育――その現状と課題」と題し,ヴィデオを交えて各地で実施したメディア・アートによる教育プログラムに関する実践的報告が行なわれた. これらのレクチャー終了後に行なわれたシンポジウムでは,専門領域や関心領域が異なるために一つのテーマをめぐった議論とはならなかったものの,メディア・アートにおける表現の自由などの本質的な問題から個々の講演内容に関わる問題など幅広く真摯で熱心な討論が展開された.メディア・アートの分野では技術革新とともに多様な表現が誕生してきており,こうした状況のなかで国際的な専門家が参集し,メディア・アートについての議論を深める機会を得られたことは大きな意義があったと言えるだろう.

[小松崎拓男]

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