ICC Report

スタイナ&ウッディ・ヴァスルカ

ヴィデオ・ワークス

1998年7月17日−8月30日
ICCシアター



「スタイナ&ウッディ・ヴァスルカ ヴィデオ・ワークス」は,ヴァスルカ夫妻による,1970年から1997年までに制作されたヴィデオ32作品を上映し,その電子映像による語彙(ヴォキャブラリー)と記述法を獲得する道程を回顧したものである.

スタイナ・ヴァスルカは,音楽を出自とする身上から,音によって導かれた純粋な視覚効果として画像処理を施す.あくまでもメディアを通した「目」としての審美的な観点から映像を構築するその作品は《ヴォイス・ウィンドウズ》(1986)や《オルカ》(1997)などに顕著な音楽や現実音から巧みに操作された映像が特徴的である.最初期の作品《ヴァイオリン・パワー》(1970−78)は,今回の「ザ・ブラザーフッド」展関連イヴェントとしても行なわれたパフォーマンス《ヴァイオリン・パワー》のドキュメントであり,スタイナが呼ぶところの「ヴァイオリンによってヴィデオを演奏する方法についてのデモテープ」である.

ウッディ・ヴァスルカによる1987年の作品《アート・オブ・メモリー》は,数々の映像実験を経て辿り着いた,ある種の自己批判をも含めたテクノロジー批評を内包したヴィデオ・アートとして頂点に位置するものと言えるだろう.主に作品の発表形態がインスタレーションへと移行した近年になっても,テクノロジーを駆使しながらも,その本質がもつ暴力性=戦争(企画展タイトルでもある「男性原理」)への言及は続けられている.

[畠中実]

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