シンポジウム/ルイジ・ノーノと《プロメテオ》

プロメテオ――聴く悲劇Prometeo―Tragedia dell'ascolto

ルイジ・ノーノ晩年の大作.ギリシア神話のプロメーテウスの物語をモチーフに,ヘシオドス,アイスキュロス,ヘルダーリン,ベンヤミンなどのテクストを哲学者マッシモ・カッチャーリが構成し,フライブルクの南西ドイツ放送局ハインリッヒ・シュトローベル記念財団実験スタジオが空間音響を担当した.当初はより伝統的なオペラに近いものとして構想されたが,最終的には視覚的なものを廃した「聴く悲劇」となった.全体は五つの「島」と題する楽章を骨格にしている.1984年のヴェネツィア・ビエンナーレの際,サン・ロレンツォ教会内に設置された巨大な船底型の空間(レンゾ・ピアノ設計)で初演.1985年に改稿.1998年8月26日−27日,第10回秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティヴァルの一環として,秋吉台国際芸術村コンサートホールで日本初演が行なわれた.このシンポジウムと浅田彰氏のレクチャー(146ページ〜)も,同セミナー&フェスティヴァルで行なわれた.

[編成]
独唱:ソプラノ×2,アルト×2,テノール
独奏:フルート(バス・フルート,ピッコロ),クラリネット(小クラリネット,バス・クラリネット,コントラバス・クラリネット),テューバ(トロンボーン,ユーフォニウム),弦楽三重奏(ヴィオラ,チェロ,コントラバス),グラス×3,語り手×2,混声四部合唱,4群のアンサンブル(それぞれフルート,クラリネット,ファゴット,ホルン,トランペット,トロンボーン,ヴァイオリン×4,ヴィオラ,チェロ,コントラバス)
電子音響スタッフ
指揮者×2


ルイジ・ノーノ(1924−90)
イタリアの作曲家.ブーレーズ,シュトックハウゼンと並ぶ第二次大戦後のヨーロッパ前衛音楽の中心的存在であった.急進的な政治思想と新しい音楽技法を統合した,厳しく強く美しい音楽を数多く残した.

[主な作品]
シェーンベルクの作品41のセリーによるカノン風前奏曲 1950
ポリフォニア=モノディア=リトミカ 1951
フェデリコ・ガルシア・ロルカの墓碑銘 1952−3
ゲルニカの勝利 1954
イル・カント・ソスペーソ(中断された歌) 1956
ヴァリアンティ 1957
オーケストラのための作品2:ポーランド日記 '58 1959
エミリオ・ヴェドヴァへのオマージュ 1961
イントレランツァ 1960 1961
ラ・ファブリカ・イルミナータ(照らし出された工場) 1964
森は若々しく生命に満ちている 1966
バスティアーナのために――太陽昇 1967
ムジカ=マニフェスト 1969
そしてそこで彼は理解した 1970
力と光の波のように 1972
愛に満ちた太陽の光の中で 1975
…苦悩に満ちながらも晴朗な波… 1977
断片=静寂,ディオティマへ 1980
プロメテオ 1984(1985改訂)
2)進むべき道はない
だが進まねばならない……アンドレイ・タルコフスキー 1987
未来のユートピア的ノスタルジア的遠方 1988


ヘルムート・ラッヘンマン――1935年シュトゥットガルト生まれ.作曲家.ルイジ・ノーノに作曲を学ぶ.通常の楽器奏法を拒絶し,特殊奏法を徹底的に構造化した音楽を試みる.作品=《temA》,《Salut für Caudwell》,オペラ《マッチ売りの少女》など.

いそざき・あらた――1931年大分生まれ.建築家.MOCA=ロサンゼルス現代美術館,バルセロナ・オリンピック・スポーツホールなど国際的な仕事を多く手がける.著書=『磯崎新の仕事術』(王国社)など.

あさだ・あきら――1957年生まれ.経済学,社会思想史.京都大学経済研究所助教授.著書=『構造と力』(勁草書房),『歴史の終わりと世紀末の世界』(小学館)など.

ちょうき・せいじ――1958年福岡生まれ.音楽学.東京大学助教授.20世紀の音楽を多面的に研究.著書=『フェッルッチョ・ブゾーニ』(みすず書房),『第三帝国と音楽家たち』(音楽之友社)など.
協力:
秋吉台国際芸術村
Archivio Luigi Nono
CASA RICORDI
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