ICCレポート

NEWSCHOOL

近藤等則《宿命反転都市》を吹く
1998年3月20日 ICCギャラリーA


藤等則は1978年にニューヨークにわたって以来,帰国後も日本国内より国外での演奏活動のほうが多く,また現在はアムステルダムにスタジオを構え活動の拠点とするなどインターナショナルな音楽活動を行なってきた(彼のかつてのバンドはまさにIMA[International Music Activities]と名付けられていた).もちろん共演者の多くは「外人」であり,かつ自らも「外人」という立場に立たざるをえない.そうしたことから近藤自身日本人であることをより強く意識させられてきたはずで,日本の社会や日本人のメンタリティに対する批判は日頃の発言や自著の中に表われている. 一方,荒川修作も1961年に渡米.一貫した日本に対する批判精神をもっていて,「変えなければ」ならない対象として日本は捉えられている. 今回のコラボレーションはある意味で共通の視点をもつと言える両者の,建築と音楽による交流を試みるものであった.近藤自身がギャラリーの作品環境の一部となり,しかしそのイマジネーションに拮抗するような多彩な音色やその音圧によって《宿命反転都市》の上を吹きぬけた.近藤の電気トランペットを用いてのインプロヴィゼーション(即興)はさまざまなエフェクターによって音をループさせたり音場を移動させたり,あるいはDATに録音された音をベースにするなど,まるで音を織るようにして重ねていくものだった.会場は特別な照明などのセットはなく展示作品の照明をそのまま使用していたが,「都市」の1日を表現するその照明の周期に合わせて演奏も同調していくようにも聞こえた.演奏は休憩をはさむ2部構成によってなされ,ほぼ1時間30分の《宿命反転都市》との交流は終わった.荒川/ギンズの「都市」がその構造によって身体性を意識させるものであるように,近藤の演奏もテクノロジーを使ったものではあるが,トランペットの音もまた人間の身体から出てくるものでしかなく,荒川/ギンズの「都市」に拮抗しうるものでなければならないということを意識させた.

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