InterCommunication No.16 1996

InterCity PRAGUE


オルビス・フィクトゥス
現代美術におけるニュー・メディア展 3/4


メニウス思想の遺産は,24の展示作品中,比較的大規模な2つのプロジェクトの直接的なインスピレーションともなった.イマジナリー・ミュージアム・プロジェクト(ティベ・ファン・タイエン,ロルフ・ピクスレイ,ミロシュ・ヴォイチェコフスキー)による《オルビス・ピクトゥス改訂版》と,コメニウスが『現世の迷路と我が心の楽園』の中で描いた世界のバロック的モデル図をインターネットのデジタル・シティ・ネットワークに置き換える試み,ラビリンス・プロジェクトの《ラビリンス》である.現代の哲学,科学,史学界がコメニウスのヨーロッパ文化における影響と意義の大きさ,そしてその方法と提議が現代においてもなお刺激的であることに気づき始めたのは,ここ10年ほどのことにすぎない.彼は,体系理論,そして物,言葉,絵,意味の間の論理的関連性が私たちの現実に対するよりよい認知と理解につながると説く近代教授法の創始者の一人であるだけではない.彼の考えた新しいグローバルな社会像,そしてそれを築くのに不可欠な要素としての科学や共通言語に対する考え方,また,書物,印刷技術,印刷された図絵と文字,そして応用技術を,作りものの幻想や現実を正すために有益なコミュニケーション・メディアと捉えたことなどが人々にアピールするようになるのに,400年近くかかったことになる.
展の《オルビス・ピクトゥス改訂版》は,デジタル・メディアとハイパーテキストの時代に,世界を絵と感覚を使って表現し教育手段とするというアイデアを改めて考察する試みである.このミュージアム・インスタレーションは三種のインタラクション・テーブルで構成されており,それぞれ文字テキストが完全に排除され,音声テキストと図絵が,見ると指し示す(タッチ・スクリーン),話すと聞く(声の識別),触ると感じる(物の識別)という異なったコンピュータ・インターフェイスを通して表示される.これによって観客は,16世紀から現代に至るまでの教育的書物,言語,世界概念に関する歴史を楽しみながら拾い読みできる.それらは,私たちの想像力,プログラム化されていない子供の心の本来の能力,そして創造的かつ連想的な思考に働きかける50の小さなアッサンブラージュ連鎖に囲まれている[訳註=中心に置かれたコンピュータをとり囲むようにアッサンブラージュのオブジェが配置される].日常経験から生まれたこれらのオブジェが,デジタル情報によるヴァーチュアル・メモリー・マシンに対照化と均衡化の効果を与えている.


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