InterCommunication No.16 1996

InterCity PRAGUE


オルビス・フィクトゥス
現代美術におけるニュー・メディア展 2/4


ューヨーク州立大学バッファロー校の伝説的なメディア学科の創設者ジェラルド・オグレイディは,メディア・アートの国際的な発展に寄与したチェコ人たちを紹介し,コメニウスを皮切りにチェコの戦前のアヴァンギャルド,アンディ・ウォーホル,チェコ・ニュー・ウェイヴ・シネマの作家たち,ブリュッセルExpo '58とモントリオールExpo '67で発表されたインタラクティヴ・マルチメディアのステージ「ラテルナ・マジカ」と「キノ・オートマト」の創始者たち,そしてアメリカのアヴァンギャルド・メディア界において最も重要な一人と言えるウッディ(モラヴィア名はボフスラフ)・ヴァスルカ,さらにメディア理論のヴィレム・フリュセールなどの国際舞台における活躍を強調した.プラハ生まれの著名な哲学者,コミュニケーション理論家であるフリュセールが90年代においてこの国にニュー・テクノロジーとその文化的影響についての関心を再び呼び起こした役割は重要で,ゲーテ・インスティテュート・プラハで今回第4回目を迎えたこのメディア・シンポジウムは,91年に同インスティテュートの招聘講演からフランスへ帰途に事故死したフリュセールを記念して始まったものである.
の他にも,プラハの芸術史家イジー・ゼマーネクの紹介した彫刻家のズデネク・ペシャーネクは,20年代初めに,動き,ネオン・ライト,音を組み合わせてニュー・メディアの実験を行なっていた.同時代のモホリ=ナギとも比較され,後年ニコラ・シェフェールなどにも受け継がれたアートとテクノロジーを結ぶこのアーティストの独創性は,そのキネティック・ネオンのオブジェ,色彩ピアノのアイデア,公共の空間における光を使った作品,建築そして抽象アニメーション映画などにみられる.その後この国における新しいテクノロジーを使った実験は,コンピュータであれレーザーやプロジェクションであれ,政治的,経済的,そして文化的な事情で戦後ずっと制限されてきたし,国際的なアヴァンギャルド・シーンとの出会いも偶発的なものに留まった.民主化革命後は,作品は新しい状況の下で作られているし,なかには進んだ機材を使える環境に恵まれた若い世代の作家たちもいる.彼らによってチェコ美術は再び独創性を取り戻したかどうかが,本展で期待されたところである.


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