ICC
OS2014
展示作品
《思い過ごすものたち》
2013/14年
谷口暁彦 dot

撮影:木奥恵三

《思い過ごすものたち》は,日用品と,iPadやiPhoneなどを組み合わせた彫刻作品の連作です.作者は,iPadやiPhoneも日用品のひとつとして扱い,端末にあらかじめインストールされた標準のアプリケーションのみを使用しています.展示室では,扇風機の風に揺れるiPadに風にたなびくティッシュペーパーの映像が流れていたり,裏面に磁石が置かれたiPadのディスプレイ上で地図の向きが回転していたり,ときおり表面に水が流れてくるiPadのメモ帳に文字が入力されたりしています.ここでは,現実世界とディスプレイ上の「出来事」とのあいだの関係が意図的にあいまいにされた状況が提示されています.

スマートフォンやタブレット端末は,この作品にも使われているヴィデオチャットに代表されるように,「いま,ここ」ではない世界を見るための窓としてとらえることができます.一方で,iPadのカメラレンズを通して屋外の様子を見たり,地図アプリによって現在地を把握するように,これらの端末はわたしたちが「いま,ここ」にいるという感覚を強化するものとしても機能します.そういった意味で,現実とディスプレイ上の出来事との関係は,それほど自明ではないのかもしれません.この作品群を見てそれぞれの構成要素がどのような関係に置かれているのかをときほぐし,推理していると,自分と身の回りのものとの関係にも思いをはせられるのではないでしょうか.

谷口暁彦 プロフィール
1983年生まれ.多摩美術大学大学院修了.自作のデヴァイスやソフトウェアを用い,メディア・アート,ネット・アート,ライヴ・パフォーマンス,映像,彫刻作品など,さまざまな形態で作品を制作,発表している.渡邉朋也とともに,メディア・アートという芸術表現について思索と実践を行なうユニット,思い出横丁情報科学芸術アカデミーとしても活動中.
過去に参加した展示・イヴェント