ICC
はじめに

今年のICC キッズ・プログラムは,赤松正行+ARARTプロジェクトによる,AR(拡張現実)技術を使った作品を展示し,もうひとつの「現実」を見ることをテーマとしています.


「もの みる うごく AR美術館」は,新しい考え方のARとして,パネルや立方体に描かれた絵画に携帯端末をかざして鑑賞する展覧会です.
ARは一般的には拡張現実(Augmented Reality)の略で,カードの上にキャラクターが現われるなど,現実の光景に電子的な情報を付加して表示する技術です.これに対して,この展覧会では現実そのものを変えてしまいます.キャンバスに描かれた船が動き出したり,写真のつぼみが開いて大輪の花を咲かせるように,現実は堅硬な一枚板ではなく,様々に変化する創造の翼を得るのです.
ここでは,これを新しいAR,変容現実(Alternated Reality)と呼びます.

赤松正行

展覧会で使用されるAR技術
本展で用いられるソフトウェアは,モバイルAR(Augmented Reality=拡張現実)システム「ARART」をベースに開発されています.
このシステムでは,検出される画像がQRコードのようなマークではなく,写真やイラストなどの自然画であることが特徴です.端末の背面カメラの映像を画面にそのまま表示すると同時に,その映像を解析し,そこからあらかじめ登録した画像を検出し,その検出された画像に応じて異なる画像を重ね合わせることで,現実世界の映像が変容して見えるように表示します.このような仕組みによって,ARARTは変容現実(Alternated Reality)と呼びうるような表現が可能になっています.
特定の画像が検出された場合は,画面上での位置,大きさ,傾きを計算し,その空間特性に合うように異なる画像をオーバーラップして表示することができます.オーバーラップする画像は,連続して切り替えられるので,アニメーションとして見えます.そして,検出された画像は常にトラッキングされるので,デヴァイスを傾けたり,動かしたりしても不自然に見えることはありません.
さらに,特定の像を検出した場合は,デヴァイスから画像に割り当てられた音を鳴らすとともに,デヴァイスからワイヤレス・ネットワークを通じてコンピュータに信号を送り,デヴァイスから鳴った音にもとづいて,スピーカから空間的に呼応する音を鳴らします.

展覧会チラシ表面のAR体験
ICC キッズ・プログラム 2013「もの みる うごく AR美術館」展では,チラシ表面でもiOSアプリ「ARART」(ヴァージョン1.1)でAR体験ができます.