ICC

オープン・スペース 2012

エマージェンシーズ! 019
「Casi Rien(ほとんど何もない)」
濱哲史

展示期間:2012年12月18日(火)—2013年3月3日(日)

《Tennis 1》2012年
撮影:木奥恵三

ある時間と場所を記録する時に,そこには,つねに記録者が完全には予想できない偶発的な出来事が起こっています.それゆえ,なにかを映像や音声,文字などで記録することにおいて,その記録される対象について考えられたことと,実際に残された記録との間には,どうしてもズレが生じてしまうことになります.しかし,そのズレは,あまり意識されることがありません.

この展示では,2012年に制作された四つの映像音響作品をひとつのインスタレーションとして展示上映します.これらの作品に一貫して作家が行なっているのは,身近な環境で起こっている,ことさらとりあげる必要がないようなほとんど何でもない出来事を周到に観察し記録することで,そこで起こった奇跡的なことを発見しそれを取り出して表現とすることです.作家は,マイクとレコーダとペンとカメラを持ってさまざまな土地を旅行する中で,音や文字や映像を記録してきました.金沢兼六園の池畔での録音,スペインの電車内で眠る女性の映像,競技場でのテニスの試合,ノストラダムスの預言に登場するフランスの松の木と町,石川県の漁港など.それらのほとんど何もない日常的な記録は,音と映像とを別々の異なる記録を組み合わせたり,記録の複製を行なったりなど,作家による編集,変換操作を通して異化作用をもたらし,そこに潜んだ無限に拡がる想像可能性をひきだされます.

展示作品
《daytime at the pondside avec la bella durmiente(眠る女性と池畔の昼間)》2012年 20分
《Tennis 1》2012年 5分
《Les Pins(松の木)》2012年 5分
《Memorandums of a harbor(ある漁港についてのメモ)》2012年 9分

使用スピーカー: sonihouse

濱哲史 プロフィール

1985年生まれ.多摩美術大学情報デザイン学科卒業.サウンドトラックと彫刻を組み合わせたコラボレーション作品や,生活録音を編集したマルチ・チャンネル音楽シリーズ,音と光をひとつの部屋に構成したインスタレーション,音響ソフトウェア作品などを発表する.また,エンジニアとしてインスタレーションやパフォーマンス作品のプログラミングやシステムデザインを多数手がける.
http://satoshihama.com/

アーティスト・トーク 濱哲史+小沢裕子+村田宗一郎
日時:2013年1月12日(土)午後2時より[終了しました.]
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ポッドキャスト「チャンネルICC」にて,この出品作家のインタヴューをお楽しみいただけます.|→ 詳細|