ICC

展示概要・作品

《フリークエンシー&ヴォリューム》
2003年
ラファエル・ロサノ=ヘメル


撮影:木奥恵三

壁面に投影される鑑賞者の影の動きによって,ラジオやテレビの放送,無線などさまざまな電波が受信されます.身体的な動作を通して鑑賞者は,自ら電波空間の中に入り込み,飛び交う電波にアクセスするような感覚を得ることができます.影を左右に移動させることによって周波数を,影の大きさによって音声のヴォリュームをコントロールします.

スペース内の12台のAM/FMラジオと,屋外に設置されたVHF/UHFテレビのアンテナによって,広帯域の電波を受信しています.この作品は,2000年にメキシコ政府が先住民によるラジオ局を規制したことをきっかけに発想されました.コミュニティなどによる小規模な発信も可能であるはずの電波というメディアが,政府や企業に占有されているという構図は世界中で見られるとロサノ=ヘメルは指摘しています.この作品自体が,知ることのない電波に遭遇することで,鑑賞者にその存在を意識させるラジオでもあります.また,鑑賞者同士の関係によっても,音響空間が変容していきます.

ラファエル・ロサノ=ヘメル プロフィール
ラファエル・ロサノ=ヘメルは,メキシコ系カナダ人アーティスト.光や影を使ったインタラクティヴな作品や,都市と情報空間を結びつけ新たなコミュニケーションを誘発する大規模なプロジェクトを世界各地で数多く実現している.日本では「アモーダル・サスペンションー飛び交う光のメッセージ」(2003年,山口情報芸術センター開館記念プロジェクト)のほか,「アート・ミーツ・メディア:知覚の冒険」展(2005年,ICC)で本作品を展示.
過去に参加した展示・イヴェント