ICC





はじめに
入場料
コラボレーション作品




《ドレッシング・テーブル(レプリカ)》
《ドライ・セル》
《銀の雲》
《リヴォルヴァー(color)》
《リヴォルヴァー (black/white)》
《至点》
《フロート》
《オパール・ループ/雲》
記録ヴィデオ上映
参加作家
関連イヴェント




シンポジウム「E.A.T.が残したもの」
コンサート「デイヴィッド・テュードア《レインフォレストIV》」

2003年4月11日(金)—6月29日(日)ギャラリーA,B,5Fロビー





コラボレーション作品


《オパール・ループ/雲》
"Opal Loop"

1980年(2002年再制作)
トリシャ・ブラウン中谷芙二子

Photo courtesy: Addison Gallery of American Art, Phillips Academy, Andover, MA

Photo courtesy: Addison Gallery of American Art, Phillips Academy, Andover, MA

Photo courtesy: Addison Gallery of American Art, Phillips Academy, Andover, MA

写真:高山幸三


 中谷は米国の雲物理学者トム・ミーにより開発された微細霧ノズルを用いた《霧の彫刻》をペプシ館で担当した.この作品のために開発された「ミー・ノズル」は,後に屋外のエア・コンディショニング,灌漑,霜害の防止などの農工業や映画産業に応用実験されたという.人工霧システムは,テクノロジーとアートの出会いによる成果として,E.A.T.の理想の一つを実現した実例と言えるだろう.
 中谷は,ペプシ館以降,固有の土地の自然環境と相互作用しながら,見えない大気の流れを可視化する人工霧の表現を続けてきた.本作品は,トリシャ・ブラウンによる美術家とのコラボレーション・シリーズの第2作(第一作はラウシェンバーグとのコラボレーション《グレイシャル・デコイ》,1979年),ダンス作品《オパール・ループ/クラウド・インスタレーション#72503》として1980年にニューヨークで発表された.中谷は,人工霧による舞台装置を担当した.「背景に湧き上がる雲,舞台に漂いダンサーとともに踊る雲,ダンサーをのみ込む霧.舞台を埋め尽くして客席へと押し寄せる霧.対流を逆転させて瞬時に霧を晴らす技術,熱力学と流体気学の応用で気流を制御し,ノズルのON / OFFで霧を含んだ気塊の量や動きを操作する方法など,屋内用の数々の手法をE.A.T.の協力により開発した(研究指導:ビリー・クルーヴァー,技術:ジル・クラウスコフ [E.A.T.])」(作家ホームページ解説より)[*].初め霧のせいで床が滑り,ダンサーは踊れなかったというが,ヒーターで床を乾燥させることで解決されたという.
 本作品は,2002−2003年開催の「トリシャ・ブラウン:ダンス・アンド・アート・イン・ダイアローグ,1961-2001」展(マサチュ—セッツ州アンド—バー,アディソン・ギャラリー・オヴ・アメリカン・アートほか巡回中)のための再制作ヴァージョンである.霧のスクリーンには,オリジナル版のダンス映像が投影されている.観客が遠目に離れて噴出する霧を眺めていると,その映像の中を他の観客が通り抜けていく.トリシャ・ブラウンのダンスの「構築された即興」の多くは日常の仕草が源泉であった.また,トリシャ・ブラウンも参加していた60年代のジャドソン・グループの公演では,後にラウシェンバーグも参加するように,画家,彫刻家など専門的にダンスの訓練を受けていない者もダンサーや振付け師として受け入れられた.その公演は日常的な物品や行為における動きが組み入れられていた.
 霧の中に入っていく観客は,流れる霧と他者のあいだで思わず戯れながら,実際の舞台装置でダンサーが体験したような感覚,あるいは,霧と無意識的に戯れるうちにブラウンの振付けの源泉に近づいているかもしれない.今回の映像インスタレーション版は,霧を通して壁面へと投影される記録映像の中,人々と霧がランダムに戯れるインタラクティヴな環境となっている. [上神田敬]

* ──http://www.nakaya.net/j/index.html(日本語)
   http://www.nakaya.net/e/index.html(英語)