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企画展:「信用ゲーム」
2001年11月2日(金)— 12月24日(月)ギャラリーA, B, C





はじめに


1971年,世界はふたつのゲームを始めました.
ひとつは「テレビゲーム」.「コンピュータスペース」という世界初の商用ゲームが発売された年です.

もうひとつは「マネーゲーム」.ドルと金(きん)の兌換が停止されたことにより,おかねはモノの価値に直接リンクしない「信用」のやりとりになりました.おかねは,数字という純粋な「情報」になったのです.

遊びのデジタル化は,私たちの娯楽のスタイルを大きく変え,おかねの情報化は,実体経済よりも何百倍も大きな金融経済を生み出しました.同じ1971年に,世界初の電子株式市場であるNASDAQが稼動を始めたことは,もう一つの象徴といえるでしょう.

この企画展の大テーマは「おかね」です.
おかねとは何でしょう.おかねに価値があるのはなぜでしょう.

それはもちろん,使用価値ではありませんし,法律で強制できるような法定価値でもありません.おかねとは,「信用」を唯一のルールとする世界最大のゲームなのです.

広義の経済学からいえば,「信用(クレジット)」には二種類あります.
ファイナンシャル・クレジットとリアル・クレジット.わかり易くいえば,「おかねに換えられる価値」と「おかねに換えにくい価値」ということです.

前者は金銭的な価値そのもの,後者は「愛」や「感謝」といった言葉で表現されるでしょう.そして,どちらも「信用」を前提にした人と人の営為なのです.

「信用ゲーム」展は,「おかねに換えられる価値」と「おかねに換えにくい価値」の両方を,アートの文脈から問い直す試みです.


トーキングヘッズのフロントマンだった,デヴィッド・バーンは紙幣をモチーフにしたコラージュ作品を出展.欧州のメディア・アート界では既に知られた存在のetoyは,アーティストでありながら,意識的に株式会社という形態を取り,「金銭価値ではなく"文化価値"を創造する」と主張します.いずれも日本では初公開です.他にも,資産運用の知識がつくコンピュータ・ゲーム.株式トレードをモチーフにしたVRシステムなど,バラエティに富んだ展示を準備しています.
(桝山寛/ますやま・ひろし/ICCゲスト・キュレーター)