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海外コネクションその1
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ネットワーク構成
 
1998年11月25日(水) 〜 12月6日(日) [終了しました.] 5 階ロビー





作品解説


インティマシー〈親愛〉という名のリアリティー

仮想現実に関わるすべての作品が抱えている問題は,「仮想世界における行為にいかにして意味を与えることができるか?」そして,「その行為が現実世界へ,どのような影響を持つことができるのか?」ということに大まかに集約できよう.従来のような単数のユーザーを対象とした作品においては,問題は仮想空間と現実空間,あるいは仮想空間とユーザーとの関係性の中だけでとらえられることが多い.一方で,複数のユーザーで共有される空間では,リアリティーの問題は,仮想空間のつくりそのものよりも,むしろコミュニケーションの質に注目されていく.それは,仮想空間が与えるリアリティーよりも,そのネットワークを越えた向こう側にいる人間の存在の方がはるかに空間をリアルにしていくことに気づくことから始まっている.
《ナズル・アファー》はそんな複数のユーザーで共有される仮想空間を利用してつくられた作品である.空間的に遠く離れた場所どうしをつなぎ,ひとつの仮想空間を複数のユーザーで共有することで,別々の場所にいるユーザーがお互いのリアルタイムな映像を見合い,会話しながら出会うことができる.
こうした仮想空間におけるコミュニケーション・デザインは,遠くの人々を単に近づけ世界を身近に感じるというリアリティーを目指すというよりも,むしろ,人間が感じ合うための諸要素を抽出し,分解し,とらえなおし,そのポテンシャルに挑戦していくという側面の方が強い.人間は「世界」でどのようにふるまうのか?
インティマシー〈親愛〉という名のリアリティーに不可欠な身体の動きや機能,形を仮想空間でデザインしていくことにより,我々はリアリティーにまつわる諸問題が,絶えず変化し,呼応し合う人々の関係性の中にあることに気づいていく.
このように,本作品は,仮想な3次元空間における動画と音声を用いた遠隔コミュニケーションという従来からのテーマにもう一歩踏み込み,サイバー・スペースにおける「親密さ」の伝達・交換の可能性について,多層な空間を設定し,特異な仮想身体共有の方法を取り入れることによって探っていく.