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[メッセージ]


[武邑光裕 (京都造形芸術大学助教授)]

地球を皮膚のように覆う電子神経網として,サイバースペースは私たちのコミュニケーションやコミュニティの生成に極めて大きな変容を促している.デジタル・ネットワークによって喚起される社会や文化の新たなコンテクストを,アーティストは敏感に身体化する.デジタル・ミュージアムにおいて立体化されるアートとは,これまでの物理的制限や物質的履歴からも自由なコンテンツとして,その生成のプロセスすらがWeb上の遍在性と深く関わることになる.サイバースペースの美学は,現実世界に放たれた人間の欲望を再デザインし,新たな生態系モデルを問うことになるだろう.
デジタルなメチエが拡張する官能の経験として,Webは意識や無意識の集合化を図っていく.現実世界とサイバースペースとの境界には,時として悦楽と衝突が重層的に織り成されていくだろう.その網目の淵に喚起されるコンテクストこそ,未来のアートフォームやミュージアムの実在を問う契機になるものなのかもしれない.
私たちは広域に遍在する無数の知性や知覚のソリッド・ステーツとの一期一会を通して,いわば感応の美術館を夢想しているのかもしれない.コミュニケーションに託された情報のデザインは,あらゆる内部と外部とを結ぶ,間合いとしてのインターフォーメーション(Inter-formation)として成熟する必要があるだろう.「on theWeb」は,インターネットによって急膨張を遂げる情報生態系に,デジタルな美学の行方をナヴィゲートする最初のステージでもある.


[浅田 彰] [伊藤 俊治] [彦坂 裕] [武邑 光裕]
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