ニューヨークを拠点に活動するアーティスト,ヴォルフガング・シュテーレ(1950年シュトゥットガルト生まれ)は,アメリカにおけるネット・アートのパイオニアのひとりです.1991年には、ニュー・メディア・アートのためのBBSによるフォーラム「The Thing」を開設し,アーティストや理論家が交流する場を作るなど,アーティストによるオンライン・コミュニティの先駆的な実践を行なっています.
1996年に開始したオンライン・プロジェクト作品《Empire 24/7》は,ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングをThe Thingのオフィスに設置したデジタルカメラでとらえたもので,4秒に1枚の画像がストリーミングによってライヴ配信されました.その後もこのオンライン・ストリーミングによるプロジェクトは続けられ,2001年9月11日にニューヨークのアメリカ同時多発テロ事件による,ワールド・トレード・センターへのアメリカン航空11便の突入と崩壊をとらえたことで知られることになりました.
今回,シュテーレ氏は,森美術館(東京・六本木)での展覧会「カタストロフと美術のちから展」のために来日し,ICCでレクチャーを行ないます.ヴィデオ・アートから始まり,黎明期からのネット・アートにおける活動をへて,ニュー・メディアによる表現の可能性を探求してきたシュテーレ氏のお話をうかがう貴重な機会となることでしょう.
司会:畠中実(ICC)