INOMATAの作品の多くは,生き物との恊働によって成立しています.これまでに,都市や建築物の形を模した透明な殻を3Dプリンターで出力してヤドカリに渡し,そこに引っ越してもらう作品,同じく3Dプリンターで出力した街のオブジェを亀に載せる作品,犬の毛と人間の髪をお互いの服として交換する作品,ミノムシに女性の衣服の切れ端を与えてそれでミノを作ってもらう作品,インコを連れてフランス語を習いに行く作品などを発表してきました.
作品制作にあたって,INOMATAはまず協働相手となる生き物の生態や特徴を調査し,それを踏まえて自らのアプローチを探っています.私たちは,人間以外の生き物が人間とは異なる世界や論理で生きていて,それらとのコミュニケーション手段はごく限定されていると思ってしまいがちです.INOMATAは,人間以外の生き物の振る舞いに人間の世界を重ね合わせることで,人間を異なる角度から捉え直し,私たち自身の姿を再発見しようとしています.それは,生き物と人間が新しいコミュニケーションの形を探りながらそれぞれの役割を見出し,最終的にひとつのフィクションを創り出す営みと言えるかもしれません.
本展示では,近作数点とともに,木の年輪と同様に生息する環境変化をログとして刻む貝の成長線を音に変換させた新作《LINES—貝の成長線を聴く ver.1.0》も展示しました.