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スタッフ・ノート

ブノワ・モーブリー,17年ぶりの初台再訪

2014年5月12日 18:00

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東京オペラシティガレリアでのパフォーマンスの記録写真と

去る4月26日,ドイツのサウンド・アーティスト,ブノワ・モーブリーが,なんと17年ぶりに初台を訪れました.


モーブリーは,ドイツを拠点に活動するサウンド・アーティストで,1980年代中ごろより活動を開始し,サウンド・インスタレーション(彼は彫刻という言葉を使いますが),サウンド・パフォーマンスを中心に制作しています.そして,それらはパブリックな場で展開されるのが特徴です.さらに,その作品には,スピーカー,電話といったものが見える形で素材として用いられ,音という要素が,環境(騒音なども含めた環境音)やコミュニケーション(メッセージを伝達するための声)といったテーマで扱われています.だから,彼がサウンド・インスタレーションを彫刻と呼ぶ時,それは社会的な関わりをもつ「社会彫刻」としての意味合いを持つものになるのでしょう.


2012年から13年にかけて,カールスルーエのZKM(アート・アンド・メディアテクノロジー・センター)で開催された大規模なサウンド・アート展,"SOUND ART sound as a medium of art"にも参加しており,何百個ものスピーカーをギリシャのデルフィ遺跡に模して組み上げた巨大なサウンド・インスタレーション,《Temple》を野外で展開し,健在ぶりを示していたのも記憶に新しいところです.


今回の来日は,彼のパートナーであるアーティストのススケン・ローゼンタールが,徳島県の神山町で行なわれている「神山アーティスト・イン・レジデンス」に参加するのに同行してのことだそうです.


モーブリーと彼の率いるパフォーマンス・グループ,ディ・アウディオ・グルッペは,17年前の1997年4月に,ICCの開館記念イヴェントとしてパフォーマンスを行なうために東京にやってきました.そして,開館に先立つ一週間にわたり,東京都内各所および横浜で,さまざまなパフォーマンスを繰り広げたのでした.


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パフォーマーとエンジニアからなるディ・アウディオ・グルッペは,モーブリーを含めて総勢6人が来日し,日本でエキストラのダンサーやパフォーマーたちを募集し,彼らと一緒に各所でいくつもの演目を行ないました.センサーやサンプラー,オシレーターなどを内蔵した衣服を着用して,その場の具体音を録音再生したり,光の状態によって音を変化させたり,マイクとアンプを内蔵した熊手で地面をひっかいたりしてパフォーマンスを行なうオーディオ・バレリーナ.分解したシンセサイザーを縫い付けた着物で,電子音を発しながら秋葉原電気街を歩いたオーディオ・ゲイシャ.モーブリー自身がパフォーマーとなった,巨大なアンプを背負ってフィードバックを轟かせながらあたりをころげまわるフィードバック・フレッド.大勢のエキストラ・プレーヤーと改造した廃品エレキ・ギターを爆音で掻き鳴らし,ライヴ会場を転げ回るギター・モンキーズ.


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オーディオ・バレリーナの真似をするモーブリー


いま思い出しても,これらの滞在制作と開催会場をコーディネートし,日本のコラボレーターとの打ち合わせやリハーサルなどをし,それを三つの展覧会を同時に開催する施設のオープンと並行して行なうのは,かなりのハードワークでした.それだけに思い出深いものでもあるのですが.あらためて当時担当されていた後々田寿徳さんの無謀さには頭が下がります.当時,私はアシスタントとして,恵比寿のクラブみるくでの公演の準備と,共演者,出演者との折衝などで奔走したり,チラシ作ったり,毎日いろいろやっていましたね.


昨年末急逝された後々田さんの冥福を祈りつつ,いまモーブリーがICC(閉館中だったのが残念でしたが)を再訪してくれたことを大変うれしく思いました.


(畠中実)






* HIVEにて公開中の「ICC 活動記録 1997-1998」では,02′30″頃より,ブノワ・モーブリー「オープニング・パフォーマンス オーディオ・バレリーナ」の様子をご覧いただけます.

http://hive.ntticc.or.jp/contents/annual/1997J