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チャンネルICC

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チャンネルICC ノヴァ・ジャン インタヴュー

2013年8月30日 11:21

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登場しているのはノヴァ・ジャン本人です

ICCのポッドキャスト・サーヴィス「チャンネルICC」で,「オープン・スペース 2013」展で《イデオジェネティック・マシン》を展示しているノヴァ・ジャンのインタヴューを公開しました.今回は,インタヴュー内容の抄訳をご紹介します.




「オープン・スペース 2013」出品作家インタヴュー
ノヴァ・ジャン


《イデオジェネティック・マシン》は,インタラクティヴなマンガです.会場に来た人の写真をを線画に変換して,その人が主人公として登場するいつも異なるマンガを,ソフトウェアによって生成します.


2011年から,私はドローイングを描きためたデータベースと,そのデータベースから一篇のマンガに組み上げるソフトウェアの開発に取り組んできました.このプロジェクトでは,体験者は,物語を成立させるために演技やコラボレーションをするよう促されます.また,OpenCVの顔検出を使って,マンガを構成する際に空のフキダシを追加しています.体験者は,できあがったマンガのPDFファイルをメールで自分に送り,後でそのマンガに自分だけの物語を書き込むことができます.


このプロジェクトに取り組むにあたっては,いろいろなものから影響を受けました.松本大洋のマンガ『GOGOモンスター』もそのひとつで,イメージの連なりによって,豊かで繊細な物語が生み出される語り口にとても感銘を受けました.そのほかに,私が元々興味をもっていたシュルレアリスト・ゲームやソ連の(訳註:エイゼンシュタインの)モンタージュ理論などを組み合わせて,イメージをまとめ上げる方法を作ろうと思ったんです.


作品に参加してくれる人には,完成したマンガを「自分のもの」だと思ってほしいし,体験するときにクリエイティヴであってほしいとも思っています.できあがってくるドローイングは自由に解釈してもらいたいですね.これは,作者である私と,鑑賞者との,創造的なコラボレーションなのですから.


ドローイングのシステムを作ることもプロジェクトの一部です.直観的にデータベースに追加していきたくて,アイデアが自然に浮かんだときにはいつでも描いています.ただ,データベースで自分の描いたものを並べていると,自分が絵を描くプロセスについて調査しているような感じもします.思い浮かぶままに描いたドローイングを後でまとめて見ると,自分でも思いもよらなかったような新しい意味が生まれるのです.


体験者とコミュニケーションをとるために,他分野の要素も取り入れようとしています.たとえば,観客がストーリーの一部になるよう演じることを要求される劇場のようなものを考えています.いまは小道具をひとそろい作っているところで,その小道具を使って,体験者はより深く物語の世界へとけ込むことができるようになるでしょう.


人間の技能をアルゴリズム化することにも関心があります.《イデオジェネティック・マシン》では,人間のマンガ家が行なっているコマを配置してマンガを構成するプロセスを,数学,さらにはソフトウェアに置き換えようとしています.このアルゴリズムは,どうすればおもしろいマンガを構成できるのかについて,私と技術協力者のアイデアを組み合わせてできたものです.ですから,もし別のマンガ家がこのプロジェクトに取り組んだら,私たちが作ったものとはまったく違うアルゴリズムができあがるでしょう.


タイトルに使われている「イデオジェネティック」は,言葉よりもイメージによって考えを形成するプロセスを意味します.この作品では,言語よりもヴィジュアルのほうを強調したかったのです.イメージが二つ組み合わさると,ある種のあいまいさが生まれます.それを手がかりに,体験者は作品を解釈します.詩を除けば,言葉では,意味がより固定化されてしまいますから.


いまいちばんおもしろいと思っているのは,チェスのようなボードゲームをデザインするソフトウェアを考案することです.具体的には,ルールセットをランダムに生成するソフトウェアを作りたいと思っています.チェスなどを解くために,いままでに人工知能のさまざまな技術が使われてきましたが,このプロジェクトではそれを逆の方向で使おうと思っています.つまり,まずソフトウェアがボードゲームを生成し,さらに人間の代わりにゲームをテストします.ゲームのバランスやプレイヤーがゲームへ没頭する度合いなど,どこかに不備や欠陥がないか,ソフトウェアがチェックするのです.


まだこれはリサーチ段階です.近頃,3Dプリンティングがいろいろなことに使えるようになってきたことに注目していて,ソフトウェアを最終的には手で触れるものにしたいと思っています.ユーザーひとりひとりが自分だけのゲームを作って,お互いにプレイしあうことができるようになるというわけです.もちろん,ゲーム・デザイナーの人たちからは,すごく困難なプロジェクトだし,数十年ゲーム・デザインに取り組んだとしても,やろうとは思わないと言われました.それでも,ぜひやってみたいと思っています.




ICCの映像アーカイヴ「HIVE」では,5月25日に開催されたノヴァ・ジャンのアーティスト・トークの模様を公開しています.ご覧いただくと作家や作品への理解がより深まるのではないかと思います.作品鑑賞の前でも後でも,ぜひアクセスしてみてください.


オープン・スペース 2013
ノヴァ・ジャン アーティスト・トーク

2013年5月25日(土)開催
司会:畠中実(ICC)
日英逐次通訳つき
01:10:47
http://hive.ntticc.or.jp/contents/artist_talk/20130525_1


[Y.Y.]