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チャンネルICC

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コンテンツ紹介

チャンネルICC ジュリアン・メール インタヴュー

2012年7月 4日 14:53

ジュリアン・メール

ICCのポッドキャスト・サーヴィス「チャンネルICC」では,「オープン・スペース 2012」展出品作家の生の声をお届けしています.制作の動機や自身のバックグラウンド,展示作品のみどころについて,アーティスト自身にお話をうかがっています.


現在は,逢坂卓郎さん,市川創太さん,藤木淳さん,ジュリアン・メールさん,ARTSAT:衛星芸術プロジェクトより久保田晃弘さん,田崎佑樹さん,平川紀道さんのインタヴューが配信されています.まだお聞きになっていない方は,期間限定の配信ですので,ぜひチェックしてみてください.
「オープン・スペース 2012」展の出品作品についてより深く知り,楽しむため,お手持ちの携帯音楽プレイヤーなどに音声ファイルを入れて,ご来館いただくのもおすすめです.
 また,ジュリアン・メールさんのインタヴューは英語で収録されていますので,ここにインタヴューの日本語訳を掲載します.



オープン・スペース 2012 出品作家インタヴュー
ジュリアン・メール


ジュリアン・メールです.アーティスト,あるいはメディア・アーティストとして活動しています.メディア・アートの領域で展示をすることが多いのですが,私自身は,「ミクスト・メディア」,メディアを混ぜ合わせるという考え方,立場により近いのではないかと思っています.


美術大学では絵画と彫刻を専攻していましたが,メディアを使った作品を作るようになり,大学を卒業した後,技術的なことを独学で身につけていきました.私はフランスの出身ですが,今は,ベルリンとブリュッセルに住んでいます.現在,V2_のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムに参加していて,ベルギーでさまざまなプロジェクトに関わっています.
 今回,出品している3つの作品とパフォーマンス《Digit》について話したいと思います.まず,3つの作品なのですが,これらは映像のインスタレーションで,すべて「低解像度」という同じアイデアから制作されています.

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作品の展示風景

最初に説明する作品《切り立った映画》は最新作のひとつで,スライド・プロジェクターを使ったインスタレーションです.スライド・プロジェクターから,映像が4×5のマトリックス状にならんだミラーに向けられています.ミラーひとつひとつが前後に動くことで,スライドから投影された映像のそれぞれの部分でフォーカスが変化していきます.この作品は,イメージの修復と蚤の市でのスライド写真の収集が結びついて生まれたものです.イメージをスキャナーのように一回で取り込むのではなく,ゆるやかにイメージの断片を修復していきます.フォーカスが変化することで,イメージがぼやけたり,シャープになったりするのです.これは「記憶」ということにつながっているのかもしれません.私たちが過去の出来事の情景を思い出そうとするとき,すべてを一挙に思い出すのではなく,ゆっくりと記憶を修復していきます.私たちは情景の全てを思い出すことはなく,イメージの一部から全体を再構成しているのだと思います.
 二つ目の作品《フリップ・ドット・ミラー(スモール・ヴァージョン)》は,フリッピング・ミラー(小さな薄い円盤型のミラーではじき飛ばされたように素早く回転する)と,たくさんのスライド写真から構成されています.スライド写真には,何かを見ていたり,示威行為をしていたり,革命の一場面の市民が写されているのですが,この小さな回転するミラーは,この群衆のほんの小さな部分である個人を映し出しています.大きな映像のとても小さな映像のフィールドの中に彼らは登場するのです.
 三つ目の作品《オクテット・プロジェクター》は,非常に低解像度の映像を使用したインスタレーションなのですが,わたしが低解像度に興味をもっているのは,いまは,あらゆる工場でより高解像度のプロジェクターを作り出そうとしているからです.これは,ピクセルを感じさせずに映像を映し出したいという考えからきていますね.

この《オクテット・プロジェクター》の「オクテット」は,フランス語で「バイト(byte)」を意味します.このような名前がついているのは,これらのプロジェクターが8×8ピクセルの映像しか投影できないからです.今回の展示では,7つのプロジェクターを使用して奥行きのあるイメージを作成しています.ブロジェクターのアングルの変化によって,奥行きのあるイメージを壁に投影します.それは低解像度の3Dイメージを作り出すひとつの方法です.
 《オクテット・プロジェクター》で使われているプロジェクターですが,じつは,100台(個)以上ものプロジェクターを作る計画があって,まだ進行中のプロジェクトなのです.V2_の滞在でも制作していました.わたしはこの作品をインスタレーションとして可能な限り大きくしたいと思っています.これらのプロジェクターは道具なわけですが,それは展示される場所や状況に応じて構成されるので,つまり数には深い意味はないのです.それで,いまは7台(個)しかないわけですが……(笑)

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《オクテット・プロジェクター》

パフォーマンス作品の《Digit》は2006年に初演し,京都のヴィラ九条山にレジデンスをしていたときに制作した作品です.これもわたしにとっては,映像を作るひとつの手段なのです.わたしは日本に来たとき,あらゆる場所でテキストがスクロールしているディスプレイを見つけて感激しました.テキストがスクロールしていくさまに魅了されたのです.私たちは映画のようにテキストを追いかけていくことが必要です.なぜなら,テキストがスクロールしているからですよね.そこで,わたしは,一語ずつ続けてテキストを書いていけるようなインターフェイスを開発したいと思ったのです.

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《Digit》のパフォーマンスの様子

《Digit》のパフォーマンスは,マジックのようだと受け取られることがありますが,それは手でなぞるだけで紙の上に文字が浮かび上がるためですね.でも,これはマジックではありません.わたしが興味をもっていることは,実体の存在しないインターフェイスを作り出そうとすることです.マジックは映像と同じようにイリュージョンであり,わたしにとっては,映像もまたマジックに近いものなのではないかと思っています.


チャンネルICC
ジュリアン・メール インタヴュー 音声/12分02秒


■「オープン・スペース 2012」ジュリアン・メール 出品作品
《切り立った映画》《フリップ・ドット・ミラー(スモール・ヴァージョン)》
《オクテット・プロジェクター》


《Digit》関連展示 ※展示期間:2012年7月6日(金)—9月30日(日)


■「オープン・スペース 2012」展
会期:2012年5月26日(土)—2013年3月3日(日)午前11時—午後6時   
会場:NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
|→アクセスページ|
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/28—1/4),保守点検日(8/5,2/10)
入場無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
/Exhibition/2012/Openspace2012/index_j.html


[U.K.]