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HIVE新着映像のご紹介

2012年1月20日 20:40

20110918_sympo.jpg

左から:ICC畠中,松井茂さん,久保田晃弘さん,桐山孝司さん

2011年9月18日に開催した,『シリーズ「新しい〈未来〉」Vol.3 工学から芸術と未来を考える』をHIVEで公開しました.
http://hive.ntticc.or.jp/contents/
symposia/20110918


シリーズ「新しい〈未来〉」は,その活動理念に「豊かな未来社会を構想する」と掲げられたICCにおいて,あらためて「豊かさ」とはなにか,そして今後構想すべき新しい〈未来〉像とはなにか,ゲストの方々とともに探っていこうというものです.

三回目のテーマは,「工学から芸術と未来を考える」.久保田晃弘さん(多摩美術大学情報デザイン学科情報芸術コース教授),桐山孝司さん(東京藝術大学大学院映像研究科教授),コメンテーターとして松井茂さん(詩人)をお迎えし,ICC畠中による司会でトーク・イヴェントを開催しました.


久保田さん,桐山さんは,現在,芸術分野で活動されていますが,もとは工学系研究科の出身で,ともに1992年に設立された東京大学人工物工学研究センターの立ち上げと在籍を経た後に活動の場を工学から芸術へシフトしたバックグラウンドをお持ちです.松井さんは,「アート&テクノロジー」をテーマとしたプロジェクトに関わってこられ,逆に芸術の側から工学をどのように問うことができるか,関心を持たれてきました.


トーク前半は,〈未来〉を考えていくにあたり,いったい20年前の工学研究の場はどのようであったのか,まず桐山さんから,「人工物工学」の成り立ちと,人工物工学研究センター設立の経緯をお話しいただきました.
センターが設立された90年代初頭は,工学が作りだしてきた物=人工物が起因する問題―地球環境破壊や事故の大型化など―が顕著になり始めた頃でした.これは,これまでの工学が進めてきた「領域分化」が招いた弊害とも言え,領域内の最適化ばかりが優先されて,領域間のコミュニケーション不在などからトラブルが発生しても,工学として自己完結できない状況が問題視されていました.そこで,領域を限定しない,領域横断型の工学として,人工物工学が始まることになったそうです.
また,当時の「設計研究」の流れも重要であったそうです.これは人間の頭の中がどういうふうになっていると物が作れるかといった,設計する人の思考過程の解明が一つの鍵と言え,60年代以降,設計研究自体は少しずつ始まってはいましたが,80年代に入って,吉川弘之氏(センターの計画推進者であり,東京大学元総長)が「一般設計学」という,領域を定めることなく一般に適用可能な思考過程のモデルを作りました.それは同時に領域横断型の研究モデルの芽ともなり,プロジェクトの実践の場となる拠点を作ろうということで人工物工学研究センターの誕生へ繋がりました.


続いて,では実際,センターでどういったことが行なわれていたのか,「有限設計ワークショップ」を当時の記録映像とともに久保田さんが紹介してくださいました.これは,常に制約条件―限られた時間や資源など―がある中で参加者同士が頭で考えるばかりでなく身体を動かしながら,数々のエクササイズや検証を通じて,いかにコンフリクトの少ない解を導き出せるかが重要であったそうです.また,当時,人工物工学のアジェンダへのアプローチともなる重要なキーワード ―アブダクションやプラグマティズムなど―が縦横無尽にシンクロしていたことや,共鳴した荒川修作の活動にも触れ,物を創出するための空間や身体の重要性へと話が展開していきました.


abduction_machine.jpg

当時,久保田さんが制作していた家具「アブダクション・マシン」.机や椅子,パーテーションへ,その時々で自由に構成を変更可能.



トーク後半では,前半に話された物理空間とはパラレルに当時大きな動きとして立ち上がってきたウェブ(仮想空間)上でのプロジェクトの話から,他者とのコラボレーション,メディア・アートの発展,E.A.T.(60年代半ばにベル電話研究所にいた技術者ビリー・クルーヴァーが中心になって,アートとテクノロジーを結ぶ数々の実験を行なったグループ)についての考察など話題は多岐に渡り,〈未来〉を考えていく上での示唆に富む活発なトークセッションとなりました.ぜひご覧ください.


■人工物工学研究センター立ち上げメンバーの一人,村上陽一郎さんのインタヴュー
http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/murakami


■荒川修作さんのインタヴュー
http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/arakawa


■久保田晃弘さんが過去に参加された展示やイヴェント
http://hive.ntticc.or.jp/?s=久保田晃弘


■桐山孝司さんが過去に参加された展示やイヴェント
http://hive.ntticc.or.jp/contents/artist_talk/20080426


■松井茂さんが過去に参加された展示やイヴェント
/Archive/2010/Kidsprogram2010/Works/workshop01_j.html


[T.M.]