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イヴェント・レポート

シリーズ「新しい〈未来〉」 Vol. 1 わたしたちの新しい進化

2011年8月24日 17:00

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左から:ICC畠中,銅金さん,スプツニ子!さん,ヤノベさん 撮影:高尾俊介

7月31日,シリーズ「新しい〈未来〉」の第一回が開催されました.このシリーズは,その活動理念に「豊かな未来社会を構想する」と掲げられたICCにおいて,あらためて「豊かさ」とはなにか,そして今後構想すべき新しい〈未来〉像とはなにか,ゲストの方々とともに探っていこうというものです.


シリーズ「新しい〈未来〉」
Vol. 1 わたしたちの新しい進化
2011年7月31日(日)
出演:銅金裕司,ヤノベケンジ,スプツニ子!,畠中実(ICC)


ヤノベさんのプレゼンテーションは,創作の原点である大阪万博の会場跡地で幼少時に遊んだ経験,さらにその後の活動に大きな影響を与えた1997年のチェルノブイリ原子力発電所とその従事者のために建造された街プリピェチへの訪問もはさみながら,これまでの作家活動をまとめて振り返るものでした.2000年を機にテーマを「サヴァイヴァル」から「リヴァイヴァル」へと拡大し,さらに活躍の場を広げられているヤノベさんですが,第五福竜丸から名前をとったアート船《ラッキードラゴン》(2009)のほか,ヤノベさんの代表作が大阪の街中で展開された「水都大阪2009」についてのお話は,行政だけでなくふだんアートに親しまない層へいかにアートを届けるかということも考えさせる,示唆に富むものでした.


スプツニ子!さんが提唱する「ドラディカル・デザイン」は,ドラえもんとラディカル・デザインを合わせた造語です(初めて発表したのはヤノベさんがディレクターを務めるULTRA FACTORYだったそうです).これは,ドラえもんに代表される日本のアニメやマンガに登場するプロダクトがもつ,批評性とその周辺の緻密な世界観を受け継ぎつつ,そこから「オチ」を抜かした状態で提示するというもの.あえて結末を用意しないことで「議論や考えるきっかけを与えるためのデザイン」を志向するという姿勢は,スプツニ子!さんが学ばれたクリティカル・デザインにも通じています.また,より幅広い層に見てもらうために,デヴァイスだけでなくストーリーや音楽,映像も作り,それをYouTubeなどで公開するという独自の制作スタイルについてもお話しされていました.
*当日は静止画のみの紹介となった最新作《カラスボット☆ジェニー》の映像は,8月10日からYouTubeで公開されています.


銅金さんは,海洋学と園芸学を修めたのちに,その知見を生かしながらアーティストとして活動されてきました.2007年にICCで開催した展覧会「サイレント・ダイアローグ——見えないコミュニケーション」では,2作品を展示(それぞれ藤枝守さん,藤幡正樹さんとの共作)されたほか,カタログにもテキストを寄稿されています(現在このテキストは一部改稿され,京都造形芸術大学のブログで公開されています).このテキストで提唱された「マニュアリティ(Manuality)」という概念は,人間が環境に行使しうる自身の力の大きさへの感性を指します.「福島原発事故を超えて」と題されたプレゼンテーションでは,人間に潜在的に備わっているというマニュアリティを呼び覚ますことこそが我々全員に必要であること,また変化に対して鋭敏に反応し,それをある種の「予兆」として作品に結実させるアートの重要性がさらに高まっていること,さらにアーティスティックな感性を備えた人間が科学に携わり,自然に対して適切な判断を下していくことが現在の状況に対する根本的な解決となりうるのだ,とおっしゃっていました.


ヤノベさんからは,12年前まさに同じ会場で行なわれたワークショップ「進化するロボットとの共生—1999年のロビンソン・クルーソー—」(「共生する/進化するロボット」展関連イヴェント)についてのお話も聞くことができました.


最後に,現在ヤノベさんと銅金さんを中心に,福島第一原発事故をきっかけとして取り組まれているプロジェクトの紹介がありました.イヴェント開催時はまだ実験データを収集する段階にあったため,残念ながら簡単な紹介にとどまりましたが,これはヤノベさんのこれまでの作品と同様,実機能をもつことが前提とされているからだそうです.学生のアイディアも取り入れながらさまざまなプロジェクトが同時進行しているなか,「よい雲を作る」プロジェクトは早ければ今秋にも第一号機が完成するそうです.正式にお披露目されるのが楽しみです.


次回のシリーズ「新しい〈未来〉」は8月27日に開催します.「未来へ向けて考える」と題し,大友良英さん,高谷史郎さんをお迎えします.大友さんらを中心に立ち上げられ,先日開催された「プロジェクトFUKUSHIMA!」のお話を中心にうかがう予定です.さらに特別ゲストとして,放射線衛生学の専門家である木村真三さんのご出演が決定しました.イヴェントの模様はインターネット中継でもお楽しみいただける予定ですが,ぜひ会場にお越しください!


*マニュアリティについては,こちらの記録映像もご覧ください.
「サイレント・ダイアローグ——見えないコミュニケーション」展
藤幡正樹+銅金裕司 アーティスト・トーク
ゲスト:いとうせいこう
2008年2月16日開催
http://hive.ntticc.or.jp/contents/artist_talk/20080216/


[Y.Y. ]