東京都心から新潟の柏崎刈羽原子力発電所までの「高電圧送電ケーブルのある光景」を4K一眼レフカメラで撮影/編集し,縦長の映像で投影する映像インスタレーション.投影にはハイビジョンプロジェクターが用いられている.2012–15年の約2年半のあいだ,両地域を結ぶ山間部のダム,国内最長河川・信濃川沿いの町村を何度も往来して撮影された.新潟は日本有数の米作地域である.そこを流れる信濃川を分水し美田を保つための治水システムが完成を迎える1970年頃に減反政策が始まる.またその頃,原子力発電所の計画が動き出した.急速に経済発展した日本のなかで,互いに依存しあう東京と新潟との関係が鮮明になる.巨大電力消費地・東京に暮らす人々への,またかつて東京に生きた新潟県民である作者自身への問いとして,高電圧送電ケーブルが象徴する「地方と首都の極端な非対称関係」を顕在化させた.
第20回文化庁メディア芸術祭 アート部門優秀賞受賞作品