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[TELE-PRESENT & THANXWARE]

テレ・プレゼントとサンクスウェア  Mas山寛

[TELE-PRESENT & THANXWARE]

出品作家(50音順):アナライジング・テロリスツ/アリンコちゃん/池松江美 大重美幸/オカモトケンジ/ケロケロキング(木原庸佐)/謝琳/大日本タイポ組合 トキワヒビキ/中ザワヒデキ/フロプロ/ペッパーショップ/松蔭浩之/Ree-k 出品作家(50音順):アナライジング・テロリスツ/アリンコちゃん/池松江美 大重美幸/オカモトケンジ/ケロケロキング(木原庸佐)/謝琳/大日本タイポ組合 トキワヒビキ/中ザワヒデキ/フロプロ/ペッパーショップ/松蔭浩之/Ree-k


《テレ・プレゼントとサンクスウェア》とは,ウェッブ上にページを公開する ことの意味を問い,ネットワークにおける「見る側と作家の関係」を,現在よ りカジュアルなかたちで双方向に強めるための試みである.まず,出品作家は ムーヴィー/テキスト/音/フォント・データなどを使って,ウェッブ上で特 定の相手に「プレゼント」をする.そして,観客は各ページにつけられた「ボ タン」によって「サンクス度数」を投票し,それが別ページにリアルタイムで 表示されるというものだ.

現在,インターネットのエコノミクスとして,贈与(フリーウェア)と資本主 義(E-cashなど)という相反する力学が同時に働いているが,ネットが双方向 コミュニケーションの契機となるためには,金銭やメールを送るよりもハード ルの低い「感謝の表明システム」が必要なのではないだろうか.つまり,ペー ジを見たり,データをゲットしたりしたら,最低限「評価」をしていってほし い,というコンテンツが《サンクスウェア》なのだ.もっとも簡潔なメタファー で言えば,《テレ・プレゼント》は演芸における「大喜利」であり「サンクス 度」が「座布団」と言える.Mas山は,95年4,5月にウェッブ上のフリーウェ ア展示会「テレ・フロッケ」を企画,開催しており,その進化ヴァージョンと いう位置づけになる.

企画=Mas山寛 企画協力=松本弦人 制作協力=スパナー社/河村眞紀子


プロダクション・ノーツ  Mas山寛

ネットワークを通じて,作家が様々なプレゼントをして,それに対してアクセ スした人が感謝の気持ちや評価を返していこうとする試み.会期中,14のグルー プや個人の作家の制作した作品が本ページ上で公開された.それらは,イメー ジやムーヴィー,テキスト,音,フォントなど形態・内容ともに非常にヴァラ エティに富んだ「プレゼント」で,アクセスした人々はWWW上やダウンロード によってそれらを楽しむことができた.そして鑑賞後,各「プレゼント」の面 白さ,楽しさ,かわいさ,完成度の高さ等を,独自に用意されたサンクス度数 投票システムによって評価し,サーバーへと返していく.随時変化していくサ ンクス度数の結果を見て,楽しむこともできた.プロダクション・ノーツ   Mas山寛このプロジェクトは当初,Mas山寛と松本弦人が,ギャラリー空間にお ける展示イヴェントとして企画したものだ.インターネットにしてもCD-ROMに しても「伝える技術」の方ばかりが注目されすぎているのではないか? とい う意識をベースに,「空間を超えた相手への,プレゼント」というタイトルが 発想された.普通の手紙やハガキやファクス,ポケベル,電話など,媒体を問 わず,来場者を意識した「プレゼント」が展示されるという概要である.つま り,重要なのはメディアではなく「伝えたいと思う気持ち」の方ではないか? という,いささかナイーヴな気分が原点になっているわけだ.

《サンクスウェア》というのは,IC '95の《テレ・プレゼント》がWWW上だけ という制約の上で行なわれたため,「気分をやりとりする仕組み」としてプリ ミティヴなかたちを組み込んだものだ.周知のように,WWW上で用いることが 可能な「伝える技術」は,既にアニメーションやサウンド,3Dグラフィックス を使ったメディアの形式として,またインタラクティヴ性においても95年秋の 時点より,格段の進化をとげている.その意味では,《サンクスウェア》のよ うなおよそ技術的には洗練されていない仕組みを,ネット上で特別な「イヴェ ント」として提示できるのは,最初で最後のチャンスだったかもしれない.し かし,技術が進化すればするほど,冒頭に概説した「伝える気持ち」が置き去 りにされがちな傾向があることは確かだ.我々のネットメディアに対するつき あい方がもう少し成熟して,システムや形式を珍しがる段階を過ぎるまで,こ のことは言い続けていきたいと思う.最後に,この場を借りて,参加していた だいたアーティストの皆さんにお礼を申し上げておきたい.Thanx a lot!!