ICC
OS2015
展示作品
《ジョニー・キャッシュ・プロジェクト》
2010年
クリス・ミルク&アーロン・コブリン

これは,ジョニー・キャッシュの死後に発表されたアルバム『American VI: Ain't No Grave』(2010)のタイトル曲のミュージック・ヴィデオを作るオンライン・プロジェクトです.参加者は,ウェブサイト上に用意されたテンプレートと描画ツールを用いてドローイングを制作し,投稿することができます.そうして世界中から投稿されたドローイングのアーカイヴから,無数の作者による無数のヴァリエーションをもつミュージック・ヴィデオが生成されます.

作者はこれまでに,ウェブを通じて不特定多数の参加者を募るプロジェクトをいくつも実現させてきました.そうしたプロジェクトでは,参加者のスキルや文化背景などが多様なため,参加者に「なにをしてもらうか」を周到に設計することが非常に重要です.このプロジェクトでは,「マン・イン・ブラック(黒服の男)」と呼ばれたキャッシュにちなみ,ドローイングに使える色をグレースケールに限定したり,テンプレートとして静止画を提供したりすることで質の統一を図っています.

「自分の身体を収めておく墓などない」と,死は必然だがその魂は永遠であるとキャッシュは歌っています.ファンたちがキャッシュへの追悼を込めて寄せたドローイングによって永遠に変化し続けるミュージック・ヴィデオは,その歌詞の優れた表現であるとともに,芸術作品とその鑑賞者との関係性を象徴するものだともいえるでしょう.

クリス・ミルク プロフィール
ミュージック・ヴィデオ・ディレクター,写真家.複数のメディア技術と物語の表現を人々の感情や視覚体験に結びつける方法を探求している.短編映画《Last Day Dream》(2009)が世界中の映画祭で上映された.2015年にVRSE.worksを共同設立.

アーロン・コブリン プロフィール
アーティスト,デザイナー.日常生活の中で生まれる大容量抽象データを人間文脈の中に変容する表現を志す.Google Creative Labデータ・アート・チーム・クリエイティヴ・ディレクターを経て,2015年にVRSE.worksを共同設立.
過去に参加した展示・イヴェント