ICC
OS2013
展示作品
《moving objects | nº 692 - 803》
2012年
ペ・ラン


撮影:木奥恵三

フレームに張り渡されたシリコンのチューブの上を多数のリングが細かく振動しながら左右に行き来しています.それは遠目には,装飾的な要素の排除されたミニマル・アートの絵画のようにも,あるいは楽譜もしくは,グラフィックによって記された図形楽譜のようにも見えます.

題名が示すように,「動く物体」を表わすものとして制作されたこの作品は,限定された形態と色彩,小さな物体の動きとかすかな音という,非常に抑制された要素によって,目と耳を楽しませてくれる作品です.たとえば,モビールなどの動く彫刻は,物理法則にもとづきながら,偶発的な要素にもとづく予測不能な動きがきわめてシンプルな方法で実現されているのが特徴とも言えます.この作品も同様に,規則的なモーターの運動とチューブの振動が,リングの規則的な運動を生み出します.左右に移動しながらぶつかりあうリングの運動は,無秩序の中に秩序を垣間見ることができる作品と言えるでしょう.

その外見とともに,機械によるメカニカルな動きは無機的な印象を与えますが,モーターの微動とそれによって生じる動きと音という現象は,どこかユーモラスであたたかみを鑑賞者に与えるものでもあります.

ペ・ラン プロフィール
1974年スイス生まれ.チューリッヒ,ベルリン在住.自作モーターのシンプルな連続運動の連鎖によって,規則性のある音やエレガントな視覚のトランス効果がうみだされるパフォーマンスやサウンド・インスタレーションを発表.「秩序のなかに作り出される無秩序」を重要なテーマとしている.作品タイトルに付帯している番号は《moving object》シリーズで使われた自作モーターの通し番号を表わしている.

関連イヴェント


アーティスト・トーク&パフォーマンス
ペ・ラン

日時:2013年8月17日(土)
午後6時30分より[終了しました.]
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