ICC
OS2013
展示作品
エマージェンシーズ! 021
「further/nearer」
2013年
前谷康太郎
展示期間:2013年10月29日(火)─2014年3月2日(日)


撮影:木奥恵三

スクリーンには,ぼやけて丸みをおびた形と,黒への階調を持った水平の帯という二種類の明るいオレンジ色の光が投影されています.それらは,その光量を徐々に減少させていきますが,それにともなって二種類の光の輪郭はだんだんとその形状を明瞭にしていきます.光が暗くなっていき,その外側の黒に溶け込み消え入りそうになりながら,光ははっきりとした方形と帯へと変化していきます.またそれが,黒から光量を増していくと,ふたたび光の輪郭はぼやけていきます.

この映像は,作家の自作による装置を用いて撮影されています.それは,レンズを使わずに小さな針穴を光が通ることで映像が写し取られるピンホール・カメラのような構造を持っています.その装置にはヴィデオ・カメラが仕込まれ,暗箱には針穴ではなく,一辺10cm程度の方形の窓のようなものが開いています.そのため,被写体は完全な像を結ばずに,光,色彩,形態という要素に変換,還元されます.この装置に光をあてて,その光源をゆっくりと遠ざけていくと,開けられた窓から入る光の状態が変化し,方形の輪郭や光の肌理が変化し,明度はゆっくりと減少していきます.

この作品では,映像として目に見えているままの状態の外側に存在する,それを映像として現出させているカメラと光源の関係の変化が記録されています.ここでは,光の距離/明度/形態が関係性をもってリンクしている状況が表現されています.映像を光,色彩,形態という諸要素に還元させることによって,見る対象や見るという行為そのものについて,再考を促そうとしています.

前谷康太郎 プロフィール
1984年生まれ.2008年東京外国語大学,2010年IMI/総合映像大学卒.京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程在学中.大学では言語学を専攻し,映像と言語の関連性への関心にもとづく写真を制作しはじめる.また,大学在学中から,自然光をサンプリングし,それを再構築したヴィデオや写真を発表.光そのものとしての映像作品を制作している.

チャンネルICC


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関連イヴェント


アーティスト・トーク
前谷康太郎

日時:2014年1月18日(土)
午後2時より[終了しました.]
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