ICC

OPENSPACE 2011

展示作品

《自針と分針》
2009年
鈴木康広

撮影:木奥恵三

針のない文字盤だけの時計の前に立つと,自分の姿が時計の針となって現われ,時を刻み始めます.ここでは,内蔵されたカメラによって撮影された画像のなかから作品に向かって立っている人だけを抽出し,シルエットとして切り抜くという最新の画像処理技術が使われています.画像が更新されるタイミングは,時針は1時間ごと,分針は1分ごと,そして秒針は1秒ごとと,針によって異なるため,1分間以上時計の前にいると,異なる自分の姿が文字盤上に現われるのを見ることができます.

時計は,誰にとっても等しく,規則正しく流れる時間の流れを示すためにあるものですが,わたしたちが生活のなかで主観的に経験する時間は,必ずしも一定ではありません.ある瞬間が濃密に長く感じられる一方で,ある期間が一瞬のように短く感じられることもあるでしょう.公共空間に設置された,自分がいないと機能しない時計は,そんな「自分だけの時間」があることをあらためて意識させてくれます.

この作品は,「デジタルパブリックアートを創出する技術」プロジェクトの一環として制作されました.アーティストと技術者が協同して作品制作にあたることにより,公共空間にとけ込みつつも参加性の高い作品となっています.

システム制作:冨樫政徳(東京大学相澤研究室)
Courtesy of Digital Public Art Project

鈴木康広 プロフィール

1979年生まれ.公園の回転式遊具を使った映像インスタレーション作品《遊具の透視法》(2001)がNHKデジタル・スタジアムで受賞したことをきっかけに,国内外の多数の展覧会に参加.《まばたきの葉》(2003),《ファスナーの船》(2004)など,何気ない日常のふとした発見をモチーフに,普遍的な共感を呼び起こす作品を制作.近年,パブリックな空間での発表を積極的に行ない,羽田空港でのデジタルパブリックアートプロジェクト「空気の港」(2009)では,18ものメディア技術を用いたパブリック・アートを展開した.
http://www.mabataki.com/